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2018.09.13

合弁会社で世界へ タクシーメディアの掲げる野望

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順風満帆のように見えるが、その裏には努力もあった。前述したように現在4500台のタクシーに専用タブレットを設置しているが、開始当初は画面が映らない等のトラブルもあったという。乗務員の高齢化もあり、従来の紙メディアに慣れきっている彼らからすれば、画面のチェックは面倒でしかなかったようだ。

「車両1台につき、2人の乗務員が交代制でつく=約9000人のITリテラシーを高めるための教育や意識改革が一番大変でした」と、金氏は漏らす。

IRISは3月にはGoogle DoubleClick Bid Managerから動画広告を買付可能にし、6月よりJapanTaxi以外のタクシー会社の車両にもデジタル・サイネージを設置し始めている。

一方、海外展開にも積極的だ。東南アジアでO2Oモバイルプラットフォームを提供するGrabと提携し、シンガポールにおいて同社が所有するライドシェアタクシーに最適化した動画広告商品「SPLIT」のトライアル提供を開始した。


株式会社IRIS 代表取締役社長・金高恩氏

日本国内のタクシーでの展開とは異なり、ドライバーが多数に渡るライドシェアにおけるサービスの浸透方法や、直接の商品広告よりもブランディング広告が主流の海外の動画広告におけるローカライズなど、変数も多く各商圏に最適化する必要があるが、「文化が異なるところを加味して取り組めば、IRISは世界的な企業になれると思っている(金氏)」と余念がない。

国内において事業基盤を確立している2社のタッグにより、世界進出を開始したIRIS。事業開始から2年弱ですでに累計黒字化を達成した同社の勢いはとどまることを知らない。

連載 : 世界を目指す「社内発イノベーション」事例
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文=木村忠昭

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