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2018.09.10

イタリア進出のスタバ、地元のカフェ文化に切り込めるか

イタリア・ミラノ「リザーブ・ロースタリー」(courtesy of Starbucks)

米コーヒーチェーン大手のスターバックスが先ごろ、イタリア・ミラノに高級店「リザーブ・ロースタリー」を開業した。同形態の店舗は、同社の拠点がある米シアトルのほか、中国・上海に次いで3軒目の開設となる。

スタバは約20年前に欧州市場に進出して以降、同地域のほか中東、アフリカなど約40カ国に3100店以上を開設してきたが、イタリアではミラノが初の出店。今後はライセンス契約を結んだ同国の小売大手ペルカッシ(Percassi)とともに、さらに複数の店舗を開業していく予定だ。

ただ、独自のコーヒー文化を持つイタリアは、その他の国とは異なる課題をスタバに突き付けている。



イタリアで直面する「困難」

スタバのコーヒーは、平均2ドル程度。だが、ロースタリーで販売されるコーヒーは、最も安いものでもその2倍の価格だ。高ければ1杯10~12ドルになる。イタリアの一般的なカフェでは1ドルを少し上回る程度のエスプレッソも、ロースタリーで買えば価格は2倍だ。

多量のミルクを入れるスタバのコーヒーのメニューは、イタリア人の多くが好むようなものではない。また、同国ではコーヒーをバーでさっと飲むことが一般的で、テーブルにつくのは大半が観光客だ。

スタバはこうした文化的な違いを全て考慮した上で地元の人の好みを重視し、メニューからフラペチーノを除外した。そして、提供する商品をエスプレッソとジェラート、ピザなどに絞っている。そのほか、店内にはカクテルを提供するバーを併設。その集客効果に期待している。

国内にある5万7000店舗以上のカフェと競い合わなければならないイタリア市場への進出は、スタバにとっては大きなリスクだ。だが、それでもカフェを働く場とし、交流する場としていくことに力を入れているスタバは、イタリアの若い消費者の間では人気を得ることができるかもしれない。



さらに、イタリアを訪れる多くの観光客たちは、スタバを利用するだろう。現時点ではかなり想像しにくいことかもしれないが、ドミノピザがイタリアで成功したことを考えれば、スタバが最終的に同国で業績を上げることは可能とも考えられる。

「高級店」先行の理由

こうした中でスタバが、平均客単価が高くなるロースタリーに高い期待を寄せていることは間違いない。2014年にオープンしたシアトルのロースタリーは現在も、売上高が前年比2桁台の伸びを維持している。

昨年12月に開業した上海のロースタリーは、オープン初日の売上高が世界最高額を記録。平均客単価はシアトルの2倍以上に当たる29ドル(約3200円)となった。また、今年第2四半期(1~3月)の決算によれば、同店舗の来店客数は継続的に予想を上回っており、平均客単価は中国国内のその他店舗のおよそ3倍だという。

これら2店舗のロースタリーが業績好調であることを受け、スタバはミラノとニューヨーク(今年11月開業予定)、東京とシカゴ(いずれも2019年中に開業予定)への出店を決めている。

編集=木内涼子

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