それから5カ月後、2018年5月、横浜DeNAベイスターズは第1期プログラムの参加企業としてソーシャルギフトサービス「giftee(ギフティ)」を提供するギフティを発表。地域経済活性化を目指した電子地域通貨サービス「BAYSTARS coin(仮)」の開発に取り組んでいくという。
「横浜スポーツタウン構想」を掲げ、地域活性化に取り組んできた横浜DeNAベイスターズが、このコラボに期する狙いとは。経営・IT戦略部の林裕幸に話を伺った。
電子地域通貨サービス「BAYSTARS coin(仮)」の利用イメージ
地域通貨を、その街へ出向くきっかけにしたい
──第1期プログラムの参加企業として、ギフティを選んだ理由を教えていただけないでしょうか?
横浜の街にスポーツ産業を生み出していくための仕組み「横浜スポーツタウン構想」を推し進めていくにあたって、重要なテーマになると考えていたのが横浜の街に人を呼び込むこと。そして街に滞留してもらい、モノの購買へつなげることです。
それを実現するために、もともと「決済」に対するアプローチは考えていました。例えば、その街でしか使えない地域通貨はひとつのアイデアとしてありました。
プリペイド式の地域通貨を発行し、それで買い物をしてもらう。そうすれば「まだ◯◯円残っているから、今度もう1回行ってみようか」という気持ちになるでしょう。
また、地域通貨の使用に何かしらの特典を付与すれば、街に足を運んでくれるきっかけになるかもしれない。地域通貨は「横浜スポーツタウン構想」の実現に向けて重要な役割を担うのではないか、と思っていました。
そんなことを考えている中で、ギフティさんが「BAYSTARS Sports Accelerator」に応募してきてくれたので、これは良いチャンスだなと。何か共創できないかと思ったんです。
ギフティさんに対して、多くの人は「ソーシャルギフトサービスを提供している会社」というイメージを持っているかもしれませんが、実は2016年5月から地域通貨の電子化を実現するソリューション「Welcome ! STAMP」のサービスを提供しているんです。
すでに長崎県の離島で使えるプレミアム付き商品券「しまとく通貨」を発行した実績がある。実現化に向けて、すぐ動き出せそうな気がしたのは大きかったです。
実際に話を聞いていて、インターネットに接続していなくても、スマホの画面に表示されたページに専用のスタンプを押すだけで決済ができる。導入ハードルの高さから、クレジット端末や電子マネーの決済端末の導入を躊躇っていた飲食店なども参加しやすく、街全体へ広がっていきやすい。そういったところに大きな可能性を感じました。
──導入にあたって店舗側は何を用意すればいいのでしょうか?
スタンプ1個あればOKです。スマホの画面にスタンプを押すだけで決済ができるので、発展していく可能性は高いのではないかと思っています。
──対象エリアはどれくらいを狙っているのでしょうか?横浜スタジアムは駅から近すぎるあまり、試合後に飲食店などに足を運ぶことは少ないのでは、という懸念もよく耳にします。
将来的な話をすれば、横浜全体を対象にできればいいなと思っていますが、最初のスタートとして見据えているのは「横浜スポーツタウン構想」の中心エリアでもある関内エリア。ここを中心に少しずつ広げていければと思っています。
仰る通り、駅から近いので試合観戦終了後、なかなか街に繰り出さないといった声も聞きますが、そこは私たちの努力次第かな、と。例えば、「THE BAYS」内に「Boulevard Cafe &9(ブールバードカフェ アンドナイン)」というカフェ&バーを持っていまして、試合終了後、観戦チケットを持っていけばお得にビールが飲める取り組みも行っています。
──すでに加盟が決まったり、賛同しているお店はあるのでしょうか?
まだ、そういった営業活動はスタートしていません。例えば、地域通貨として使ってもらうのであれば、ユーザーの皆様に何かしらのメリットがないと使ってもらえないでしょう。
地域性という縛りがあると、かえってデメリットにもなり得る。そこでしか使えないのであれば「使いにくいね」と言われてしまう可能性もあるので、それを乗り越えるための施策が必要です。地域通貨を使うことで何か特典が得られる、よくある言い方では特別感を付与する、ということですね。1000円分の地域通貨を買ったら50円や100円のインセンティブがついてくるみたいな形です。