タラバガニとマラソンで盛り上がる9月のウラジオストク

ウラジオストク国際マラソンのゴール目前の光景。背後に金角湾大橋が見える


トラに扮した仮装パレードも

ウラジオストクでは、このような各種のイベントが1年を通じて行われているが、なかでも面白いのは、地元の人たちにとっては大切な記念日となる9月23日に開催される「トラの日」だ。

これはひとことでいうと、市民総出でトラのフェイスペイントを楽しむイベントで、この日、中央広場に向かって下るオケアンスキー大通りでは、トラに扮した仮装パレードが繰り広げられる。


大人も子供もトラのフェイスペインティング

なぜ、「トラ」なのかというと、この町の歴史と大いに関係している。ロシア人が初めてウラジオストクにやって来た1860年頃、現在の港周辺は森に覆われていて、ウスリータイガーがうろうろしていたという。当時のロシア人たちは都市の建設の過程でトラとの遭遇が日常だった。いまも、市内のそこかしこにトラの像が置かれている。

ウラジオストク郊外には、野生のトラを放し飼いにしているサファリパークもあるのだが、数年前、餌として与えられた生きた山羊と、睦まじく寄り添っているトラの映像がユーチューブを通じて世界へと発信され、大きな注目を集めた。

現地で旅行業を営む宮本智さんによると、「今年は日露交流年なので、日本から多くの文化交流の関係者が訪れました。でも、最近目につくのは、これまでほとんど見かけることのなかった20代から40代の日本の個人旅行者です。子連れの日本人家族も増えていて、サーカスが人気です。郊外にあるキタイスキー市場でも日本人の姿をよく見かけるようになりました」という。

2000年代以降、日本人の海外旅行者数はまったく増えていない。逆に、中国や韓国の海外旅行者はぐんぐん増えている。とくに、韓国の人たちは日本より人口が少ないのに、海外旅行者数は日本より多い。

海外の人たちからみると、日本から来るのは年配のツアー客ばかりで、若い人は少ないというのが常識となっている。とはいえ、比較的観光の歴史の浅いウラジオストクでは、訪れる日本人は電子簡易ビザを活用した20代から40代の若い人たちだ。

とにかく、せっかく現地を訪ねるなら、渡航時期にどんなイベントや公演があるかくらいは事前に知っておいたほうがいい。ウラジオストクのイベント情報については、現地情報サイト「VL.RU」が参考になるだろう。

連載:ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
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文=中村正人 写真=佐藤憲一、VL.RU

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