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起業家たちの「頭の中」




大物起業家に共通する「人生の一回性」の意識

もうひとつの極である「ビジョンの強さ」についてお話しします。

経営のボトルネックとは何か?それは突き詰めると経営者の能力です。そして経営者の能力の最大のボトルネックは「経営者自身のメンタルモデルの大きさ」だと言えます。

例えば私の考えられる範囲と、孫正義さんの考えられる範囲は全く違う訳ですよね。「売上を豆腐のように1丁(兆)、2丁(兆)と数える」と私が真似してみたところで、どこか嘘くさいと思ってしまい、人に本気度は伝わらないでしょう。それはいまの私のキャパシティを超えているのでしょう。

打ち手というのは向かうべき方向を決めてそこから逆算していくものなので、構想を大きく描ければ描けるほど打ち手の強度が高くなり、中間解に落ちなくて済みます。「たとえ人に批判されることであっても、やるべきことだったらやる」という力がそこで生まれるんです。

──確かに。成功している人、魅力的な人は「独自のビジョンを持っている」という共通項があると感じます。新野さんが「ビジョンが大事だ」と気づかれたのは、何か契機があったのでしょうか?

私が内省的な人間だからそう考えるのではないかと思います。そして、なぜそれを一生懸命考えるのかというと「幸せになりたい」という自己愛が強かったからだと思います。ゆえに、「幸せになるためにはどうあるべきか?」を考えたがる。

その特徴をわかりやすく例えると「中二病」です(笑)。起業するというのは「中二病的心を持ち続ける」ことだと思います。

では、なぜ中二病になるのかというのを深堀りして考えると、それは「一回きりのこの人生を有意義にしたい」という欲望が強いからだと思います。「一回きりなんだから、やるっきゃない!」という想いが増すんですよね。

楽天株式会社CEO・三木谷浩史さんは「阪神・淡路大震災で多くの人の死を目の当たりにしたことをきっかけに、価値観が変わった」という話をしておられますが、あれも人生の一回性を非常に意識しているということです。アップルのスティーブ・ジョブス氏の有名なスタンフォード大学卒業式講演の3つ目の話も”About death”でした。

──新野さんご自身にも、人生の一回性を強く意識するような出来事があったのでしょうか?

私は事業をやっていた父親の影響が大きいですね。小さい子どもから見た父親は世界一かっこいい男で、何でもできるスーパーマンじゃないですか。その彼が経営者だったので、野球選手の息子が野球をやりたくなるのと同じように、父の姿を見て自然と備わってきたというのがひとつです。

その迷いがさらに少なくなったのは2012年頃。その時期、病気で倒れて7ヶ月くらい会社を休まないといけなくなってしまったんです。「もう社会復帰できないかもしれない」とまで言われて、その時いかに自分の持っていたものが貴重だったか、悩んでいる時間が無駄だったかを痛感しました。「こんなに素晴らしい仲間と可能性のある事業に出会っているのに、儲かるだの儲からないだの何小さいこと言ってるんだ!」と思ったんです。

大切なものを取り上げられそうになった瞬間、そのことを強く感じたという意味で言えば、私はいわば小さな死を経験したのかもしれませんね。


新野良介◎三井物産生活産業セグメントにおいて事業投資部隊に所属し、国内中間流通戦略の立案、事業投資の実行、企業再建に従事。その後、UBS証券投資銀行本部にて消費財・リテールセクターを担当し企業の財務戦略アドバイザー業務に従事。2008年に株式会社ユーザベース(UZABASE,INC)を設立。企業・業界分析のための経済情報プラットフォーム「SPEEDA」とソーシャル機能を兼ね備えた、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を展開。東京、大阪、シンガポール、香港、上海、スリランカ、ニューヨークに拠点を構える。

文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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