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2018.09.11

起業家は「中二病的心」を持ち続けた方がいい|新野良介

ユーザベース代表取締役 新野良介

「経済情報で、世界をかえる」をミッションに掲げ、企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を提供しているユーザベース。2008年創業のベンチャー企業でありながら、2013年に上海・香港・シンガポールに拠点を開設し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設。

翌年、2017年にはNewsPicksの米国進出に伴い、Dow Jones社との合弁会社をニューヨークに設立するなど、グローバルでアナリストや編集者、公認会計士など多種多様なプロフェッショナルが集まる会社としても名を轟かせている。今回は、同社の取締役・新野良介氏に起業家の素養や組織づくりの秘訣などについてドリームインキュベータ小縣が聞いた。(全7話) ※本記事は2017年7月21日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。

レストラン経営で痛感した「100人のファンを作れ」の意味

──起業家にとって大切な素養を3つ挙げるとするとなんだとお考えですか?

まず「『目の前のお客様をいかに満足させるか』という執念と、将来のビジョン・夢の強さ、その両極の強度が高い」。次に「困難な時こそ団結できる人と働く」、そして「PDCAを高速回転させられる」の3つではないかと思います。



1つ目の「『目の前のお客様をいかに満足させるか』という執念と、将来のビジョン・夢の強さ、その両極の強度が高いこと」。これは例えばAmazonのジェフ・ベゾス氏はその典型だと思います。「明日届くのでもびっくりなのに今日届くの!?」と、顧客を満足させることに一歩も引かない執念。そして「どこまで事業伸ばしちゃうの!?」とも感じるほどの大きなビジョン。どちらも極めて強く持っていますよね。

「両極が強いこと」が肝で、一般的には、「こんなにお客様に尽くしても儲からないかな」などとあれこれ考えた挙句、結局中間解に落ちてしまうことが多いんですよね。

これについては、以前NewsPicksでも記事化された、カリフォルニアのベンチャーキャピタル・Yコンビネータの教えとして「100人のファンを作れ」というものがあります。(リンク)この言葉はまさに金言で、要するにお客様が「ああ、これを使って良かったな」「良いサービスだったな」と喜んでくださる以上の価値なんて存在しない。その価値を生むためにビジネスモデルを洗練させていく執念が必要だという意味なんです。

エアビーアンドビーのCEOであるブライアン・チェスキー氏も「100人のファンを作れ」という言葉に支えられたと発言しています。その100人から始まって、今や宿泊施設検索サービス「エアビーアンドビー」は世界中で展開されていますよね。

──「目の前のお客様を満足させること」の重要性を感じたのは、何か原体験があったのでしょうか?

実家の稼業で、兄とレストランを経営していた時の経験が元になっています。当時、伸びていた競合を参考にしつつ、利益率の高い飲料を注文してもらうために「まず飲み物の分しかメニューを出さない」「『お飲み物は?』としか聞かない」などいろいろと真似をしてみたんですが、ちっともお客様が来なくて(笑)。おまけに焼肉レストランだったので、狂牛病のニュースに大打撃を受けて、どんどん客足が鈍っていったんですよ。

そんなときに、「少なくとも来てくれるお客様を満足させなきゃ」と、競合研究を止めて目の前のお客様に集中し出してから、客足が伸び始めました。「ああ、これが本源的な価値に拘るということなんだな」と思いましたね。

自分の店に来てくださるお客様がどういう人かという情報は、世界で一番私が持っていたはずです。それに根ざしてしっかりやっていけば、そのお客様を満足させることにかけては世界一になれる可能性がある。そういう風にミクロな視点で、一人一人のお客様を満足させるという執念が物凄く重要だと思います。

その後、三井物産で勤務していた時も、事業投資などで上手くいっている理由を一般化すると、やっぱり事業を進めようとしている人に情熱があるか、かつその人が事業をよく知っているかどうかなんですよね。私はそれを「肌触りのある需要」と呼んでいます。需要があることだけでなく、その肌触りまで分かるほど知り尽くしているという場合に成功率が高かったんです。

これらの体験を経て、目の前のお客様を満足させる執念の重要性を体感しました。
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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