二人のビジョナリーのもう一つの共通点は、その「スター性」だろう。色男だったヒューズ氏はキャサリン・ヘップバーン始めハリウッド女優との噂が絶えなかったが、マスク氏もルックスが良く、女優と結婚・離婚したり歌手と付き合ったりしている。
アメリカン・コミック「アイアンマン」の主人公、女たらしの億万長者実業家「トニー・スターク」はハワード・ヒューズをモデルにしたと言われる。映画版でスタークを演じたロバート・ダウニー・ジュニアは、役作りのためにマスク氏に会いに行った。これも興味深い接点だ。
イギリスの女優タルラ・ライリーとは、2010〜2012年と2013〜2016年の2度結婚していた(Getty Images)
心の休まる暇のないビジョナリー
他人に見えないビジョンを追いかけるというのは、極めて孤独な作業でもあるのだろう。
晩年のヒューズ氏は極端な潔癖症が病的なレベルにまで進んで、ホテルの部屋に閉じこもりきりとなった。マスク氏にはそのような破茶滅茶な言動や奇行は聞かれないが、最近は発信意図が良く分からないツイートが多かったり、睡眠薬を多用していると語っているのが心配だ。
ビジョナリーというのは、止まると呼吸できない回遊魚のように動き続けるものなのだろうか?
スペースXは、来年NASAとの宇宙有人飛行を計画している。ファルコンヘビーをさらに上回る史上最大のロケット、BFRの開発も控えているが、その先にあるのは2024年をターゲットとする「有人火星探査」だ。
マスク氏は火星に100万人が移住する未来を思い描いている。BFRロケットは一度に乗客100人と物資を搭載することが可能で、一人当たりの火星渡航費用の見積もりは20万ドル(約2200万円)。映画を見たりしながら90日間で火星に到着するという。
果たして火星行きの大きな夢は実現するだろうか。そこに辿り着くまでには、果てしない試練が待ち構えていることだろう。
ビジョナリーへの投資は、万人向けではない。ビジョナリーと一緒に夢を見たい、そのためにはどんなリスクも覚悟するという「パニクらない」投資家だけが、自分の資産を預けるべきだろう。