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メディアドゥ(東京都千代田区)のオフィスで集まったEOのメンバー

条件は、創業者かつ現役の経営者、かつ年商1億円以上。そして紳士淑女であることーー。そんな経営者集団が存在することをご存知だろうか。

その名も「EO-Entrepreneurs’ Organization(起業家機構)」。1987年に設立された、世界的な起業家ネットワークである。EOとは一体、どのような組織なのか。社長同士、一体どのような思いを共有し、どのようなコミュニティを築いているのだろうか。

EOは世界54カ国、173チャプター(拠点)が存在し、13,000人を超える起業家たちが所属している唯一無二の団体に成長した。日本では95年にグロービス創業者でグロービス経営大学院学長の堀義人氏を中心に設立。国内ではTokyo、Osaka、West Tokyo、Tohoku、Nagoya、Fukuokaの6つのチャプターがあり、日本全体では約450人の会員を抱える。

EO Tokyoには世界で最も多い263人が所属。月に一度の勉強会「月例会」や、メンバーが約10人ごとに分かれて定期的に集まり、互いに研鑽し合う「フォーラム」など、様々な学びや共有の機会がある。

起業家の中の起業家「EO of the Year」に聞く

毎年の総会では、各フォーラムからノミネートされた代表者の中から、「EO of the Year」を選出し大いに盛り上がる。選ばれるのはEOのバリューを体現している人物、いわば”経営者の中の経営者”である。今夏の総会で今年のEO of the Yearに選ばれた、フィックスターズCEOの三木聡氏に話を聞いた。



「そうそうたる方々がいらっしゃる中で選んでいただいて、光栄です」と笑顔で語る三木氏。ハードを制御するソフトウェア開発を主に手がけるフィックスターズ。東証一部上場、量子コンピュータを手掛けるカナダの会社と協業するなど、事業が好調である以上に、三木氏の選出理由として、EOへの貢献が大きかったことにある。

「フォーラムの中で私は『営業管理部長』と自称し、みんなの事業戦略を聞き、それぞれの会社の売り上げが伸びるよう叱咤激励しています。その点が評価されたのかもしれません。今のところ、フォーラムに属する9社の年商は合計400〜500億円。それを2020年までに1000億にしようという目標をみんなで立てているんです」と語る。

「スタートアップが大企業になっていかないと」

自社の売り上げをあげるだけでなく、なぜ他社の成長にもコミットしようとするのか。そこにEOという組織の特殊性がある。

「EOは日本国内でも他に類を見ない起業家コミュニティです。EOの先に日本の経済があります。今はまだまだ大企業の力が大きいですが、スタートアップが大企業になっていかないと、日本全体が衰退していってしまうという危機感を持ってEOにコミットしています」と三木氏。起業家たちの目線の先には、日本の未来があるのだ。

経営者がぶち当たる壁、経験をシェアし乗り越える

東京商工リサーチの調査によると、2009年以降、国内の年間新設法人数は年々増加し、2017年には13万1,981社と調査開始以来、初めて13万社を突破した。その数の分だけ、社長と言われる存在が誕生していると言える。

一方で2017年の「倒産」は8,405件、「休廃業・解散」は2万8,142件に及んだ。経営者の苦労を物語る数字である。 会社を興すには勇気と困難を伴う。一方で、売り上げをあげて会社を維持、成長させるにはより継続的な奮励努力が必要とされる。経営には、時にシビアな判断や大きな賭けに踏み切らねばならない瞬間がある。

「起業家というのは結構孤独なんですよ。企業の秘密や信頼に関わることを抱え、一個人としてなかなか相談できる相手がいないんです」と語るのは、このほどEO Tokyoの会長に選ばれたマーケットエンタープライズ代表取締役社長の小林泰士氏だ。



「例えば多くの経営者がぶち当たる、売上3億、10億、50億の壁を先輩の起業家たちはどう乗り越えてきたか。EOでは信頼と敬意で結ばれた仲間たちと、経営の悩みだけでなく、プライベートの悩みもシェアする。秘密保持契約を結び、『経験』をシェアし合うんです」。

小林氏自身、9年前に最年少の28歳で入会した。売上30億の壁を乗り越える時や、IPOに挑戦する際などにEOの仲間たちに救われることもあったという。自身も2015年にEO of the Yearを受賞した。

「世界文脈」志向、EOから日本を変えたい

三木氏同様、今年のEO of the Yearにノミネートされたメディアドゥの代表取締役社長執行役員CEOの藤田恭嗣氏と、リミックス代表取締役の富永律子氏にも話を聞いた。

藤田氏は作家や出版社と電子書店を仲介する取次事業で業界首位となり、東証一部上場企業に育てた。今期のEO副会長にも就任。「EOに入会して15年目。現在のメンバーの中で25番目に古いメンバーになった」という藤田氏。来期の会長就任が決まっている。



EOというコミュニティについて、「自分が創った会社をいい会社にし、社員を幸せにし、社会に貢献していきたい。経営者にはみんな共通する志があるし、悩みがある。経営者同士『分かち合い、学び合い、気づきを与え合える』ということが、ユニークな特徴だと思います」と話す。

一方で、危機感もあるという。「EO自体、世界文脈でこの数年をどう立ち向かっていくのかが重要だと思っています。再来年に東京五輪を控え、さらに国際化が進むことは間違いない。世界に呑みこまれないよう、EOから日本を変えていくことが必要です」。

「日本にはどれだけ恵まれた財産があるか」

富永氏率いるリミックスはOEM菓子のパッケージを含む商品企画、製造管理、食品関係のコンサルティングなどを手がけている。自身は音大を卒業後、ピアノ講師を経て起業というユニークな経歴。EOのアジア22カ国の勉強会のリーダーをつとめ、積極的にグローバルのEOにコミットしている点が高く評価された。英語は独学だ。



富永氏は「今までの日本人が思う、グローバルのリーダー像を変えたい」と言う。「日本人は英語にコンプレックスがあるあまり、自ら可能性を狭めてしまうことがあります。でも、英語が得意でなくても、思い切って積極的に海外に出てみたら、多くの外国人が日本の『初心』や『生きがい』など日本的価値観をリスペクトし、学びたがっていることがわかりました。日本にはどれだけ恵まれた財産があるか、日本はどれだけ恵まれた市場かを実感しました」と語る。

「EOの『Trust and Respect』の精神が好き。人と人をどう繋げるか、眠っている機会や財産をどう繋げるかを考えて行動しています。ベンチャーと老舗のミックスも面白いですよね」と富永氏。女性メンバーは少数だが、女性同士の交流も盛んだという。

EOが掲げる5つの価値観は以下の通り。経営者だけでなく、あらゆるビジネスパーソンが心がけたい精神だ。

1、Boldly GO!(果敢な挑戦)
2、Thirst for Learning(学びへの意欲)
3、Make a Mark(次代を創る)
4、Trust and Respect(信頼と敬意)
5、Cool(格好良さ)

EO of the Yearは2012年に始まった。これまでの受賞者の顔ぶれからも、多様な起業家のコミュニティであることがうかがえる。

2012年 ホットリンク 内山幸樹氏
2013年 ビジョン 佐野健一氏
2014年 グラフィコ 長谷川純代氏
2015年 マーケットエンタープライズ 小林泰士氏 (現会長)
2016年 ブラス 河合達明氏
2017年 イノベーション 富田直人氏

EOでは、若手起業家育成のため、年商1億円に満たないスタートアップでも参加できるプログラムも始めた。 進化を続ける唯一無二の起業家コミュニティに今後も注目していきたい。

文=林亜季、写真=小田駿一

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