AIを「人間のコミュニケーションの裏方」に使う最適な方法

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囲碁のAIについても「強さ」を求めるのであれば感情価値など不要ですが、「対局相手としてエキサイトするか」という点で言えば、人間相手の方が大きな価値を持つかもしれません。相手の人が悔しがるとか、自分を認めてくれるといった結果によって勝利の喜びが増す人だっていることでしょう。
 
ではこのような問題に対して、どうプロダクトのアイディアをブラッシュアップすればよいのでしょうか?1つの方法は「人間同士のコミュニケーション」の裏方としてAIを使うという考え方があります。
 
例えばAI自体に接客をさせることが感情価値を損ねるにしても、接客スタッフの持つタブレットや、身につけるインカムに対して、「どのような会話をすることが顧客満足度を高めるか」というヒントをAIから自動的に配信することはできます。
 
あるいは、タイプの異なる接客スタッフのうち誰がどの顧客を担当すれば顧客満足度が上がるか、というマッチングをAIに行わせるという方法もあります。こうすれば顧客が触れるのはあくまで人間なので感情価値が得られ、かつAIのサポートによってその精度を向上させることもできるかもしれません。
 
また「人間と見分けがつかない範囲まで表現を限定する」という手もあります。例えば直接対面する人間を、感情価値が損なわれないほど精巧に作り上げることはまだしばらく技術的に不可能ですが、例えばチャットボットのように表情も声のトーンもわからないような状態であれば、その難易度はずいぶん下がります。

また「一般的な会話相手」ではなく、あくまで特定の製品に関するカスタマーサポートといった形で会話内容を限定すれば、さらに「それらしい」会話を出来るようになるでしょう。
 
自分たちがAIプロダクトで解決しようとしている問題が、「感情価値」の絡むものなのかどうか、そしてもし絡むならこのような微修正はできないか、是非検討してみて下さい。

連載:失敗しないAIプロダクトの作り方
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文=西内啓

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