9月5日、調査企業「IDC」が発表した最新レポートで、VRをとりまく厳しい現実が明らかになった。現在のVR機器は3つのセグメントに分けられる。スクリーンレスビューワーと呼ばれるスマホと組み合わせて用いる製品と、コンピューターなどに接続して使用するケーブル型のヘッドセット、さらに単独で使用可能なスタンドアローンのヘッドセットだ。
IDCによると、2018年第2四半期のVR機器の出荷台数は、スクリーンレスビューワーが前年同期比で59.1%減、ケーブル型ヘッドセットが同37.3%の減少となった。一方で、スタンドアローン型は417.7%の増加だが、このセグメントの出荷台数は21万2000ユニットと非常に規模が小さく、VR機器全体では前年同期比で33.7%の減少となった。
IDCは今後の市場の拡大を、オキュラスの「Oculus Go」のような新たな製品が牽引していくと予測している。しかし、筆者はスタンドアローン型の市場も初期の需要が満たされ次第、かつてのケーブル型と同じ頭打ちの時期を迎えると考える。VRが抱える根本的課題が解決されるには、まだまだ時間がかかりそうだ。下記にその3つのポイントをあげる。
価格の高さ:多くのVRデバイスは数百ドルもする高額なもので、高性能なPCも必要であるため導入コストが非常に高い。オキュラスが200ドルで発売した「Oculus Go」は、ある程度はこの課題を解決したが、性能はまだ十分とは言い難い。
不格好さ:VR機器はサイズが大きく、外見が不格好であり装着感も快適ではない。また、着用するのがばかげたことだと感じる利用者も多い。
安心感:VRデバイスはユーザーの視覚を現実社会からほぼ完全に切り離すため、快適に利用できるシチュエーションは限定される。またVR酔いのような現象が生じる場合もある。
VRデバイスを一般レベルまで普及させるには、上記のような課題を克服する必要がある。スタンドアローン機器も、現状では完全なユーザーエクスペリエンスを実現したとはいえない。
解決策の一つとして考えられるのは、ヘッドセットとコンピューターをワイヤレス接続し、映像データをストリーミング再生することだ。しかし、この場合には巨大なデータを遅延なく送信できる接続方式が求められ、5G通信やNGCodecなどの新たな動画圧縮技術の組み合わせが必要になる。
しかし、これらの技術的進歩がもたらされるまでには、まだ長い時間が必要だ。VRは当面の間、専用のエンタメ施設などで提供されるツールにとどまり、一般人の日常レベルの製品にはなり得ない。普及台数は今後も低い水準にとどまるだろう。
この分野に投資を行なう人は、かなり長期的な視点が求められることになりそうだ。