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 人と集まるのが好きな「引きこもり」

──起業する前は引きこもりだったと聞きました。

ネガティブな理由があって引きこもったのではなく、家から出る理由がなかったんです。大学院を中退した頃、ちょうどスマートフォンアプリ市場が伸びている時期で。会社を作った先輩からゲーム開発の仕事を引き受けたりしていました。

ネットがあったから、フラストレーションを感じることはありませんでした。たまに受託をこなして、あとはダラダラ過ごす。スマホゲームを作ったり、ToDoリストを共有するアプリなどサービスの開発を繰り返していましたが、趣味の域を超えず利益を生むまでには行かなかったですね。

人と会うのは嫌いじゃないし、声優ライブのような時間を共有するイベントはもともと好きなタイプの人間です。ただ、移動がとにかく面倒で……。コストがかかるなら、VRで解消すればいいと考えたんです。

──移動が面倒だから、ネットの中でライブに参加できるようにしたかった。

はい。VRを初めてかぶったその日に、いまの共同創業者に「VR空間でライブに参加できるサービスをつくろう」と提案したんです。ところが、「面白いけどまだ時期が早すぎる」と一蹴されてしまって(笑)。当時はまだVRは開発者用キットがあるくらいで、いまのようにVRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は市販されていなかった。VRはまだ多くの人にとって、身近な存在ではなかったんです。

それでも諦めきれず、VRアプリを自作したり、ゲーム開発のブログを書いたりしているうちに、徐々に活動が注目されるようになってきた。それで開発ブログを見てくれたスカイランドベンチャーズの木下慶彦さんが「会社にしちゃいなよ」と言ってくれて。そのころにはVR市場も立ち上がりを見せていたこともあって、2015年に会社を設立し、クラスターのα版を16年に、正式版17年にリリースしました。

 

──そもそも大学院を中退したのはなぜだったのでしょうか。

大学では宇宙について、大学院では量子物性の研究室で量子コンピュータについて研究していました。ガンダムなど、1980~90年代の宇宙を描いたポップカルチャーが好きで、そんな世界を実現してみたかったんです。ところが、いくら理論を研究しても、SF世界を実現することはできない。もっと世の中に直接影響を与えられないかと悩んで、いきなり教授に退学すると伝えました。

就職しようと会社を調べたこともあったけど、どこも自分のやりたいこととはちょっと違う気がして。いまならハッキリ言語化できますが、僕は何かをつくるのが好きで、世の中のクリエイティビティを加速させたい。

人類には「想像力(イマジネーション)」と「創造力(クリエイティビティ)」という2つの力があると思っています。前者はそれこそ昔から豊かに発展していて。SF作品では宇宙はもちろん、昔からVRもテーマとして扱っていた。想像力は、無限に羽ばたかせることができる。

一方で、イマジネーションを形にする創造力も大事です。僕が研究していた宇宙分野は、それこそ理論ばかりが発展して実証実験や開発が追いついていなかった。



そんなSF世界を実現させてくれるのが、VRです。VRの開発は1960年ごろから始まっていますが、最近のVRブームで大きく進歩しました。

文=野口直希 写真=小田駿一

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