ビジネス

2018.09.07

テスラがEV販売以外に直面する「もう一つの競争」

Vitaliy Karimov / Shutterstock.com


一方、テスラが同月に公表した年次報告書によれば、同社が来年6月末までの12カ月間に設備投資のために必要とする金額は、およそ25億ドルだ。これだけの資金があれば、カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの工場を稼働させていくことはできるだろう。

だが、小型SUV「モデルY」とEVトラック「テスラ・セミ」の開発、中国工場の新設、傘下の太陽光パネル・太陽電池メーカー、ソーラーシティーのレガシーコストの全てを賄うことはできないと考えられる。テスラは来年とそれ以降の8年間、ニューヨーク州バッファローにあるソーラーシティーの工場に年間5億ドルを出資することになっている。

こうした一連のプロジェクトは全て、テスラが描いてきた成長の物語に欠かせない要素だ。だが、今後テスラが追加の資金調達を行わなければ、恐らくこれらを継続していくことはできないだろう。

来年は自社の転換社債に加え、ソーラーシティーの転換社債2億3000万ドルが11月に償還期限を迎える。これらの償還にかかる費用は、およそ11億5000万ドル。その他のプロジェクトには、約8億5000万ドルが必要とみられる。さらに、バッファロー工場には5億ドルが必要だ。つまり、テスラはこれらだけで、少なくとも25億ドルを必要としている。

NIOは中国市場でBEVを販売し、アストンは歴史ある高級ブランド「ラゴンダ」のBEVを開発している。両社が上場を通じて調達を目指す金額も、およそ25億ドルだ。そして、これら2社が調達するのは、もはやテスラに振り向けられることはない資金だということになる。8月にはナスダック総合指数が連日最高値を更新したが、そうした環境においても、一業界の一分野に流入する資金には限りがある。

テスラがEV事業において激化する競争に直面していることは、すでに多くの人が指摘している。だが、同社にとってより重要になるのは、資金調達の面において直面する競争かもしれない。

編集=木内涼子

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