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『As the Call, So the Echo』

──周囲からの反応はどうでしたか?

作品のコンセプトと他人が注視している点が微妙にズレているかも、と思うことが多少ありましたが、それは当たり前のことです。

人は、僕ではないので。逆に、解釈に違いがあるからこそ面白いんだと思えるようになりました。

写真の、表現としてのおもしろさ

──最後に、奥山さんが思う「写真の魅力」について教えてください。

2つあります。ひとつは、断定のできない、あいまいな表現ができるところ。写真には、表現として「見せすぎない色気」があると思います。

饒舌すぎない、と言いますか。その四角いフレームから外の世界は誰にも断定出来ないですし、写っているそのものについても断定がしにくい。つまり、例えば誰かが写っている写真があったとして、その人が僕の友人であるか、弟であるか、子どもであるかは誰にも断定は出来ないじゃないですか。映像のように、尺があり、言葉があり、音もあり、という状態とは表現の手数が違う。

抽象的な話ですが、人の感情には、赤い時もあれば白い時もある。白から赤に変化していく、その微妙な谷でも山でもないその瞬間に、人は惹きつけられるのだと思います。そういう曖昧な短い瞬間を、トリミングできるのが写真の良い特性だと思うんです。

──ふたつめはなんでしょう。

もうひとつの魅力は、見る時や環境によって、捉え方や価値が変わるところです。見る場所、時、サイズ、装い、によって、写真の見え方は大きく変わる。

僕は、自分の作品を、無意識的に「観る状況」によって大きく変わるように構築しています。僕の作品は、写真集でも、展覧会でも、雑誌でも、広告物でも、WEB上でも、様々な状況で見ることができるように、配置しています。そのどれもが、違った見え方をするはずです。例えば、写真集という一つの束なりの中で見る1枚と、その写真が巨大にプリントされて額装された状態で見るのでは、全く別物に見えると思いますし、周囲や前後の構成も異なればその写真の意味合いは変わる。

「ウェブで見れるから」といって、ずっとウェブ上だけで見ることを僕は全然否定はしないのですが、それでは写真の面白さを味わえていないと思っています。

もし「奥山由之」という存在を知ってもらえたのなら、ぜひ写真集を捲ったり、展覧会に足を運んでもらったり、雑誌や広告物など、実物で観て欲しい。そうしたら、「写真ってこんなに面白いんだ...」と思ってもらえるように作られています。

なぜなら、僕が心から「おもしろい」と思っているから。それが伝わったら嬉しい。これからも、誰かに何かを"伝える"ために、写真や映像を作っていきたいです。



Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。


「The Arts」カテゴリーで選出された、他の受賞者のインタビューは特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。



奥山由之◎1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。 2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。 主な写真集に『As the Call, So the Echo』『君の住む街』『POCARI SWEAT』など多数。 近年では、TVCM・MV・映画などの監督業も精力的に行っている。

文=明石悠佳 写真=小田駿一

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