物議の膝つき選手に賭けたナイキ 狙いは若者層


企業の採用活動では今、多様性と社会的責任に重きを置くことがトレンドとなっている。しかしそれより重要なのは、膝つき抗議を始めたキャパニックのジャージがNFLで売れ行きナンバーワンの商品になったことに、ナイキが気づかないはずがないということ。

キャパニックの行動は、ユースレベルを含む選手らの間にまで広まっていった。また、ナイキの商品を扱う小売チェーンの一つであるディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)が今年2月、殺傷力の高いライフル銃の販売をやめると発表したとき、若い消費者層の間の同チェーンの地位は向上した。

キャパニックは2016年以降NFLの試合には出場していないものの、彼のジャージは今でも人気だ。(彼は現在、各チームが結託してキャパニックとの契約を避けたとして、NFに対する訴訟を起こしている)

キャパニックの抗議活動は、ユース選手たちにもインスピレーションを与えている。トランプが大統領である現在、ユーススポーツでは、白人以外の選手がいるチームは頻繁に人種差別的な中傷を受けている一方、生徒の膝つき抗議に反対する行動をとった審判が資格停止処分を受ける事例も起きている。

一方、若いファンや選手の間ではNFL離れが進んでおり(抗議活動に憤っている中高年のファンも失っているかもしれない)、代わりにプロバスケットボールNBAの人気が上昇中だ。これには多くの理由があるが、その中でも確実なのは、NBAが選手に対し、国歌斉唱中は膝をつかないよう交渉したものの、選手らの政治的な意見を封じ込めるようなことをしていないことがあるだろう。

NBAの最優秀選手に何度も選ばれたレブロン・ジェームズはトランプを「U bum(無能なやつ)」と呼んだが、NBAの中に動揺した反応を見せる人はいなかった。また、黒人男性が警察に撃たれたことへの抗議活動がスタジアムの外で行われたことが原因で、サクラメント・キングスの試合が遅延した際、オーナーのビベック・ラナディベは共感を示し、抗議活動参加者への支援を表明した。NFLのオーナーが同じことをする場面を想像できるだろうか?

そのため、ナイキがキャパニックの行動に怒りを感じている側よりもキャパニックに賭けるのは、金の面では筋が通っている。そして、企業にとって本当に重要な意義とは金だ。データを見れば、若い消費者や選手たちがナイキ側についているのは明らかだ。私の15歳の息子やその友人に聞かずとも分かることだったのだ。

編集=遠藤宗生

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