2011年10月5日、一人の天才経営者がこの世を去った。アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ。享年56歳であった。ジョブズの死の数週間前、「フォーブス」は、彼と禅師の乙川弘文との交流を描いたマンガ『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』を一部抜粋して掲載した。
曹洞宗の僧侶であった乙川は1967年に渡米し、カリフォルニア州各地で禅の指導をして回った。そして71年にジョブズと出会うと意気投合。86年には彼が興したNeXT社の宗教顧問に就き、91年にはローレン・パウエルとの結婚式を執り行うなど、ジョブズの人生に大きな影響を与え続けた。しかし2002年、旅行先のスイスで池に落ちた次女を助けようとした際に溺死し、帰らぬ人となった。乙川、満64歳であった。
禅を通じて「完璧」であることを希求したジョブズと、自分自身の人生を受け入れるよう教え諭そうとした乙川老師。この抜粋では、愛するアップルを追われ、NeXTを起業して間もないジョブズと老師のやり取りが描かれている。同社で完璧なコンピュータをつくりたいと願うジョブズは、そのためにも「間」の感覚を会得したいと乙川に訴える。乙川禅師はジョブズに経行(歩く瞑想)をさせ、心を無にせよと説く。果たして、ジョブズが導き出した答えとは―。