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2018.09.08

「美味しい」は社会を変える力になる|レフェルヴェソンス 生江史伸

「レフェルヴェソンス」「ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー」のエグゼクティブシェフ 生江史伸氏。



ノルウェーのコーヒーブランド「フグレン」のコーヒーを、バリスタがサーブしてくれるカウンター。

──まさに今回の新店では、大阪のブーランジェリー「ル・シュクレ・クール」と、 渋谷のコーヒーショップ「フグレン トウキョウ」とのコラボレーションという形で、それを表現されていますね。

枠を超えて、一緒に軒を並べて、みんなが協力し合いながら、心から「美味しい」っていうものを世の中に提供していける。そういう世界観をここで見せることができれば、業界が変わっていくんじゃないかと。今まで繋がりが想像できなかったものをコネクトし、新しい価値観や多様性を生み出していければ、大げさな話ではなく、社会を変えていく力になり得るのではないか、そうなれば嬉しいな、と思っています。

──新しい価値観や多様性を生み出し、社会や人々に必要とされるものを創り出すには、どのようなアプローチが必要ですか。

「本当に必要なことは何か?」という問いを突き詰めていくことが大切だと思います。そのために、そう思考せざるを得ない環境に身を置くといいですよ。例えば、電気やガス、水道がないようなところで、数日間を過ごしてみる、とか。

僕は毎年のように、ノルウェーの友人たちとフィヨルドの中にある島でキャンプをするんです。海に潜ってオイスターやムール貝を採り、山でキノコを採集して料理をしたり、風呂がないから海水を浴びたり。電気がないので夜は真っ暗なんですが、人間すごいもので、だんだん暗くても見えるようになるんです。

そういう生活をしていると、人間本来の感覚が呼び覚まされ、本当に必要なものって実は少ない、ということに気づきます。

自分たちが普段いる場所は、いろいろな価値観に囲まれて、かなりがんじがらめになっている。でも一歩外に出てみると、必要のないものがたくさんあることに気づくし、なんて小さな尺度で物事を捉えていたんだと思える。その感覚をもう一度、普段の生活に当てはめて考えてみると、大事なことが浮き彫りになります。こうした思考を積み重ねていくことで、社会や人々が本当に必要としていることを、イメージできるようになるのではないでしょうか。



生江史伸◎1973年神奈川県生まれ。慶応大学法学部政治学科卒。北海道の「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」やロンドンの「ザ・ファット・ダック」などを経て、2010年に「レフェルヴェソンス」、2018年に「ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー」をオープンする。環境への配慮や社会的に意義のある活動をライフワークにしており、幅広い層から高い支持を得ている。

Bricolage bread & co.
東京都港区六本木6丁目10-1 六本木けやき坂通り1階
電話:03-6804-1980

連載 : クリエイティブなライフスタイルの「種」
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文=国府田淳

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