デジタルアート集団「チームラボ」が描く、境界のない世界(下)

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多角的な人格を持つアート集団「チームラボ(teamLab)」は、クライアントから受託したアプリケーションやウェブサイト、バックエンドシステム、データベースの開発も手掛けており、ビジネスプロジェクトとアートプロジェクトの両方に携わっている(本記事の前編はこちら)。

チームラボは創立から一貫して、アート創作活動を支えるための事業に取り組んできた。チームラボの猪子寿之代表は「最初の頃は、日中に収益を生む活動を行い、夜に創作活動をしていた」と明かす。「日中に稼いだもので、アートに再投資した。今はそれが完全に逆転してはいないものの、チームメンバーの半分はデジタルソリューションに取り組み、残りの半分はアート作品の創作に集中できるようになっている」

2013年には現代アートの祭典「シンガポール・ビエンナーレ」に参加し、2014年にはニューヨークのペース・ギャラリーに作品が扱われるようになったチームラボは、今でこそ世界の芸術界で認められた存在だが、創立から10年間は日本の芸術界からアート集団として認知されず、見向きもされなかった。

大きな転機は、2011年に訪れた。著名芸術家の村上隆から、台北にある自身のカイカイキキギャラリーへの出展を依頼され、これを大成功に終わらせたのだ。猪子は、当初を振り返り、次のように語った。

「最初の頃、僕らのやっていることは理解されず、とても変なもの、未知のものとして見られていた。自分が大学に入学した時、世界ではインターネットが普及しようとしていた。すぐに、ネット時代は社会が変わる革命だ、人々の関係性を変えるとワクワクして、これをアート制作に応用したいと思った」



チームラボの作品はギャラリー内にとどまらない。チームラボ史上最大級のプロジェクトは、九州・武雄温泉で毎年開催する「かみさまがすまう森」(今年は10月28日まで)だ。このアート展では、チームラボのデジタルテクノロジーが自然界に直接応用されている。

会場は、江戸時代に50万平方メートルの森の中に作られた庭園「御船山楽園」だ。古代から生きる木や花々、巨石、洞窟などが、大規模なプロジェクションと光で照らし出され、庭園は没入型・対話型のデジタルアート迷路と化す。
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編集=遠藤宗生

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