チームラボは光を絵の具のように、そして全世界をキャンバスのように使い、マジカルでドラマチックな別世界のデジタル体験へと鑑賞者をいざない、アートによって現実逃避を実現させてくれる。
2001年、猪子寿之代表(41)が4人の友人とともに創立したチームラボは、さまざまな分野のメンバー500人を抱える「ウルトラテクノロジスト集団」だ。芸術家やプログラマー、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家、デザイナーが集まり、継続的な集団的創造・思考のプロセスを通じて芸術と科学、技術の融合を図っている。
チームラボは光や投影、センサーや音を使ったデジタルアートを活用し、人々の間の境界を消し去ることを目指している。一つの体験を共有する鑑賞者の間には、絵画や彫刻を見るときの一対一の関係とは異なる新たな関係性を作り出せるというのが、チームラボの信念だ。その芸術作品は、個人の行為によって変化し、鑑賞者が増えるにつれさらに変容するため、鑑賞者は周りの人々の存在をより強く意識するようになる。
ExhibitionView,teamLab:Au-delàdeslimites,2018,GrandeHalledeLaVillette,Paris (c)teamLab
作品のメインコンセプトが決まると、スペシャリストを集めてそのアイデアを洗練させ、制作を始める。プロジェクトのゴールと技術的な実現可能性の評価は、作業を進めながら行う。チームメンバーの数はそのプロジェクトによって6~100人までさまざまだ。物理学や統計学、自然言語処理、芸術を学んできた猪子は、次のように語った。
「以前は、世界とは何かということに興味があったのだけど、だんだん、人間にとって世界とは何か、人間と自然、自分と世界との関係を、アートを創っていくプロセスを通して、少しでも知っていけたらいいなと思い始めた。今僕たちが創っているデジタルアートは、サイエンスや数学、テクノロジーの知識に基づいているのだけど、近代以前の東アジアや日本は、今とは違う世界の捉え方をしていたんじゃないか、僕たちとは違った空間認識の論理構造で世界を見ていたんじゃないかと思っている。
それは、西洋の遠近法のパースペクティブとは違う論理構造で、3次元空間で作ったものをコンピューター上で論理的に平面化することで、どういう空間認識の論理構造があるのかを探していた。アートを創るプロセスを通して世界を知っていくことに終わりはなく、可能な限り創り続けたいと思う」