デジタルアート集団「チームラボ」が描く、境界のない世界(上)

ExhibitionView,teamLab:Au-delàdeslimites,2018,GrandeHalledeLaVillette,Paris (c)teamLab


チームラボは、国際交流基金が主催する日本文化イベント「ジャポニスム2018」の一環として、9月9日までパリのラ・ヴィレットで、新作と従来作品の発展形を組み合わせたチームラボ史上最も複雑かつ最も重要な展覧会のひとつ「teamLab : Au–Delà des Limites」(意:境界のない世界)を開催中だ。

チームラボはこの展覧会で、境界のない一つの世界をつくることを試みている。生死のサイクルの中で、咲き誇り散っていく花。延々と歩き続け、鑑賞者が触れると反応するカエルとウサギ。何千匹が一つの生命体のように泳ぎ、光の尾を引いて空間に描く書『空書』を残す魚の群れ。壁と床の境界は、めまいがするような空間の中に消え去る。

展示の中心となるのは、壁から床へと流れ落ち、鑑賞者の足元で割れて変化する巨大な仮想の滝だ。来場者はその流れに干渉することもできる。


ExhibitionView,​teamLab:Au-delàdeslimites​,2018,GrandeHalledeLaVillette,Paris (c)teamLab

別の展示「グラフィティネイチャー - 山と谷(Graffiti Nature - Mountains and Valleys)」では、鑑賞者が描き色を塗った動物や花々が、その場で自然界へと放たれる。各作品の世界に足を踏み入れることで、鑑賞者は芸術と一体化し、つながることができる。作品の間に明確な境界はなく、作品同士は常に対話を続けながら融合する。明確な始まりと終わりがなく、物質のない空間へと自由に動いては互いに影響し、混じり合っていく。これこそが、人間の表現を物理的な制約から解放させられる非物質的デジタルアートの強みだ。



「境界のない新しい体験を作りたかった」と猪子。

「個々の作品や都市生活には境界があるかのような感覚になってしまうんだけど、本当は、自分と世界とは境界のない連続的なものだと僕は思っている。なので、ここでは人と人、作品と作品、人々と作品、自分と世界には境界は完璧にあるものじゃなくて、本当はもっと曖昧で関係しあっているものだ、連続している関係だ、っていう体験を創りたかった」

作品は、事前に録画されたアニメーションでも、繰り返し再生されるループでもなく、コンピュータープログラムがリアルタイムで鑑賞者の動きを検知し、現実的な反応を見せ、作品に継続的な変化を引き起こすことで作成されている。一度起きた光景は二度と再現できず、繰り返されることはない。自然界で同じ瞬間が二度と繰り返されないのと同じだ(後編は明日公開)。

編集=遠藤宗生

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