ビジネス

2018.09.04

「世界観をつくるだけでは不十分」──前田裕二が明かした、SHOWROOMの成長3要因

SHOWROOM代表取締役社長・前田裕二


2. 世界観を言語化する

ユーザーの声に合わせてサービス内容をどんどん改善していく一方、初期から一切ブレずにSHOWROOMに染み渡っていたのが、前田のビジョンだ。起業家がビジョンを持つことの重要性は至るところで語られているが、前田はそれを「言葉にする」ことが極めて重要だと強調する。

「まるで壊れたレコードかラジオみたいに、『僕らの手で世界をどうしたいのか』を良い時も悪い時もひたすら語り続けた」と振り返る前田。言葉にすることで、ビジョンに興味をもった人が仲間になってくれる。仲間同士の共通言語、すなわちコミュニティの絆を再確認することができる。実際、初期の採用は、かなり「ビジョン共鳴」に依存していたとのことだ。

また、そのこだわりは社内についても同じ。社員規模が20-30名くらいのときは、週に一回の個人面談でビジョンを語り、社員規模が増えてからは役員やマネジメント層に語り続けた。しつこいと思われても、SHOWROOMの存在意義や、その素晴らしさを、熱っぽくウェットに語り続けた。

スタートアップは、環境が目まぐるしく変わるため、メンバーがやりがいを見出せずに離職者が多く出るケースも少なくない。そんなときに「この会社で頑張る意味」の原動力になるのが、ビジョンなのだろう。

3. 最初のドミノを倒す


 
SHOWROOMの知名度を一気に高めたと言っても過言ではないのが、AKB48メンバーのライブ配信。これは簡単に実現したわけではない。

「アイドル業界とのネットワークはゼロだった。まず最初のトランザクションをつくるために、全国のアイドル事務所に連絡したり、ライブ会場に毎日足を運んだりした。注意すべき事として、良い仕組みのプラットフォームを用意すれば、勝手にコンテンツが増えるというわけではない。自分でコンテンツを増やす工夫をして、起爆剤を点火する必要があります」

コンテンツを増やすためには、地道に足で稼ぐしかない。実際、AKB48とのコラボもすぐに実現したわけではなかった。前田はAKB48のプロデューサー・秋元康になんどもアタック。最初の頃は顔すら覚えられない中で、世界中を駆け回って熱弁したという。

前田「社内の共通言語ができるくらいに、ビジョンを語り続ける」
続いて宮宗は、スタートアップでの人事について質問。先の見えないスタートアップ経営では、熱意と実力をもつメンバーの採用・ケアは容易ではない。

ここでも前田が挙げる答えは3つだ。

 
ドリームインキュベータ執行役員・宮宗孝光

1つめは、「余白」をもつこと。前田はある時期から、まるで親や家族と対話する時のように、社内のメンバーに対しても自分の弱い部分や人間的な部分を隠さないように努めて意識したという。

スタートアップで注意すべきなのは、トップの熱量が強すぎてメンバーが「自分ももっと頑張らなければ」とプレッシャーを感じてしまうこと。前田が「頑張れ」と言わなくても、彼が頑張りすぎている後ろ姿をみているだけで、メンバーにとってはプレッシャーになってしまうのだ。

「余白を持つことが上手だなと思ってリスペクトしているのは、家入一真さん。僕は、自分のダメな部分を開示するようにしてからは、さらに『チームで補い合って成果を出すこと』に意識が向き、明確にマネジメントへの考え方が変わりました」
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文=野口直希 写真=小田駿一

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