だがこれこそが、より多くの成果を上げ、生活のバランスを維持するための鍵なのかもしれない。これに関することは、企業の管理職も気づき始めている。人間の脳と身体は、より短時間に多く働かせることで、機能が高まるのだ。イリノイ工科大学の科学者が1950年代に行った研究では、週に35時間働く人は、20時間の人と比較して生産性が半減することが分かっている。これは心理学の分野で、センディル・ムッライナタンとエルダー・シャフィールが「集中力の分配(focus dividends)」と呼んだ概念で説明できる。
2人は著書『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』で、時間短縮により生産性を向上させられる理由を説明している。人は、丸1日を仕事で埋めようとするとだらついてしまう。時間が限られていれば、作業をできる限り終わらせようとする気が起きる。このエネルギーの急上昇が、最初のアクションを起こさせ、勢いを生む。結果として、同じタスクのために丸1日時間を空けておいた場合よりも、生産性は上がる。
他にも多くのメリットがある。バイス誌が掲載したある記事では、1日の労働時間を短縮することで、雇用が増えるのみならず、生産量が落ちるために環境汚染が減ると指摘している。これは、警察や教師といったその場にいることが必要とされる仕事や、建設業のように多くの人力を要する仕事には明らかに当てはまらないが、自営業者や、従業員の生産性を上げようとする経営者や管理職にとっては実現可能なことだ。
あなたがこうした立場にいたり、労働時間を減らして生産性を向上させたいと考えていたりするなら、以下を試してみよう。
「きょう終わらせられることがこれだけだとしたら、それで満足できるか?」と自問する
重要性と満足度に従って1日を組み立て、仕事の優先順位を付けること。思いつくままのタスクを手当たり次第こなしていくのではなく、その日に終えられたら真に誇りに思えるようなタスクを決め、それを絶対に終わらせること。