ビジネス

2018.09.04 15:00

ソーシャルスタートアップのコミュニティから、日本の課題解決が始まる


渡邉賢太郎プロデューサーは「“市場の失敗”ともいえる社会課題領域に取り組むソーシャルスタートアップは、ビジネスモデルを構築するのが通常のビジネスよりも難しい。そのため、そのような社会的には重要なことなのに、なかなか応援を得られにくい事業構築に挑む起業家を募り、参加者同士が相互扶助するコミュニティをつくることを重視しています」と話す。

プロジェクトが提供する創業支援プログラムでは、「リーンスタートアップ」を活用。参加起業家は、4カ月の「ブートキャンプ」期間で事業モデルの仮説構築と検証を徹底的に繰り返し、最後の「デモデー」でそれまでに見出した事業戦略の仮説を発表し、さらなる支援者や投資家を募る。

渡邉は「私たちが教えたり、輩出したりしてきた、というよりも、参加起業家と一緒になってつくってきたイメージです。起業家が自然に学び合うような信頼関係を作る点を意識してきました」という。

創業初期に投資を受けづらいソーシャルビジネスでこそ、コミュニティは威力を発揮する。互いに資源や人脈などを共有することで支え合うことができるためだ。プロジェクトを通じて、同志が増えれば、それだけ活用できる知恵や人脈も厚くなる。

プロジェクトでは、伴走役であるメンターに卒業生がなる点も特徴の一つだ。また、ブートキャンプを通じて、メンバー同士が切磋琢磨するなかで、互いに何を学び、気づいたかを共有し、それぞれの成長の過程を共にすることに重きを置く。同期やメンターとの共有体験を積み重ねると、それだけ絆も太くなるからだ。

渡邉は「これまでの“卒業生”83組150人のコミュニティができたことで、ようやく、組織の壁を越えて互いの強みを出し合い、課題解決をめざす『コレクティブ・インパクト』の起点ができました。『ソーシャル』と『ビジネス』は相反する点も少なくありませんが、私たちは、こうした矛盾を抱え続ける勇気を持っていたい。今後は今まで起業やイノベーションの担い手とされなかった人たちが挑戦を始めるような取り組みがしたいと考えています」と話す。

すでにSUSANOO卒業生が自ら「柔道」や「建築家」「難民」などそれぞれ事業分野で「SUSANOO」的なコミュニティづくりを行っている。渡邉は「私たちの取り組みが、タンポポの綿毛のように、いろいろなところに飛んでいって何かが始まる“タネ”になってくれればうれしいですね」と話す。


渡邉賢太郎◎SUSANOOプロデューサー、種麹。1982年生まれ。大分県別府市出身。立命館アジア太平洋大学(APU)卒業。証券会社退職後、2年間で40カ国を訪れる世界一周の旅へ。帰国後、NPO法人ETIC.を経てMistletoeコミュニティへ参画。チェンジメーカーの生態系づくりがテーマ。おせっかい社かける創業COO。

文=池田正史 写真=若原瑞昌

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