「アメトラ」の復権とポール・スチュアートのスーツ

ポール・スチュアートのクラシックなスーツ


小暮:アメリカで創業したのは、1938年。『最大のブランドを目指す』のではなく、『最高のブランドを目指す』こと」がコンセプト。ニューヨークのマディソン街東45丁目にアメリカの旗艦店があります。

森岡:ニューヨークのショップも素敵ですが、日本の青山店もカッコいい。表参道のランドマーク。石垣に囲まれ、ウィンドウのディスプレイが映えます。

小暮:ニューヨークの旗艦店のディスプレイも昔から有名ですが、青山店もいいですね。着こなしの参考にもなる。あの石垣は確か、表参道に昔からあった土留めの石垣を利用したものだったと思いますよ。それに日本ではあまり知られていませんが、ポール・スチュアートは、セレクトショップ的な性格も併せもち、世界中から最高のものをセレクトして、自社のレーベルで店に並べてきました。

森岡:その指摘は若い世代には意外に感じるポイントかもしれませんね。カジュアル的なアイテムでは昔からイタリア製のスエードブルゾンなどを扱っていました。スーツやネクタイの素材もイタリア製が多く、早くからワールドワイドで商品を集めていたと記憶しています。

小暮:品揃えもスタイルとして考えているので、どれを選んでもまとまる。それにアメリカ流にいえばソフィスティケート=洗練された印象を感じさせる点も“大人”のアメトラだと思います。

森岡:クラシックなスタイルを現代的にアップデートさせるのが得意なブランドですからね。スーツスタイルもビジネスで通用することは言うまでもありませんが、程よいファッション感度も備わっているので、洗練されて見えるのだと思います。ファッション界全体が80年代とか90年代を意識しているし、その時代に日本でも流行した「アメトラ」が復権しているいま、もっと気にしていいブランドではないでしょうか。

小暮:いや、男の着こなしはスタイル、と謳うポール・スチュアートですから、ウチはずっと変わっていない。時代がそれに気付いた、追いついたということかもしれませんよ(笑)。


森岡 弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ現在に至る。

小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。

photograph by Masahiro Okamura | text by Masahiro Kogure | fashion direction by Hiroshi Morioka | illustration by Bernd Schifferdecker | edit by Akio Takashiro

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