学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で公開された研究は、2万5000名の中国の人々を4年間にわたり追跡したもので、数学力などの知能テストの結果と大気汚染との相関関係を調査した。
その結果、見えてきたのは、人間は大気汚染にさらされると認知能力が低下することだ。男性のほうが女性よりも影響を受けやすい。また、年齢に応じて大気汚染の影響は異なり、高齢者のほうが影響を受けやすい。さらに、教育レベルの低い人々のほうが、大気汚染による知能の低下度が大きいことも明らかになった。
2万5000名の参加者の知能の低下を測るために、研究チームは年に数回の言語力や数学力を問う知能テストを実施し、大気の汚染度との関係を調査した。大気の汚染度の指標としては、大気中の二酸化硫黄や二酸化窒素、その他の10マイクロメートル以下の微粒子の量が用いられた。
どのようなメカニズムで、大気汚染が知能の低下を招くのかは現状では不明だという。しかし、研究チームは、仮に中国がアメリカの環境保護庁(EPA)の基準値レベルにまで、汚染を改善できたとしたら、全ての中国人が1年間の教育を受けるのと同等の効果が得られると述べている。
世界で最も大気汚染が激しい250都市のリストに、中国は178都市を送り込んでおり、インドからは23都市が入っている。2017年の国連のデータによると現在の世界人口は76億人で、約26億人が中国及びインドに暮らしている。