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「向いていること」よりも「やりたいこと」を

──「学生だけ」でプロジェクトを進めることにこだわるのは、どうしてですか?

そもそも、GoSWABの発足前はいくつかの研究室にまたがっていろんな大人の協力を得ながら研究を進めていました。ところが、かかわる団体や人が増えてくると意思決定に時間がかかったり、それぞれの方針の違いや組織間のズレを調整したりする必要が出てきてしまって、肝心の研究に専念できないというジレンマを感じ始めました。

街中でサンプリングするにしても、研究に特定の団体が参加していると行政に申請しなければいけないこともあって、事務手続きに時間をとられるのも歯がゆかった。

ぼくは「やりたいこと」と「やりたくないこと」がものすごくはっきりしているんです。自分がやりたいくないことに時間や労力を割くことに、ものすごく苦痛を感じてしまう。そんな性格なので、純粋に研究だけをやらせてほしい、というフラストレーションが溜まってしまったんです。

大学2年生の夏に、新宿でラーメンを食べながら東大の友人と話していて「スムーズに研究できるように、学生だけのプロジェクトを立ち上げよう!」と決め、GoSWABを立ち上げることにしました。

──子どものころからそういう性格でしたか?

子どものころからずっと、やりたいこととやりたくないことがはっきりしていましたね。そのせいで、小学校、中学校はほとんど学校に行っていなかったんです。

いま振り返ってみて、多分、人と同じ勉強をしても面白くない、だから学校の勉強はやりたくないという気持ちが根本にあったんだと思います。とはいえ、人に負けるのも大嫌いだから、成績はよかった。学校に行かない間は、秋葉原から部品を集めてパソコンを組み立てたり、プログラミングの勉強をしたり、ほかの子どもたちがやっていないであろうことをして過ごしていました。

両親は2人とも公務員なので、ぼくが休んでいることに対して「学校に行きなさい」と厳しく言っていましたね。他の人と同じで普通のことをしてほしかったんだと思います。高校時代も最初の方は微生物の研究についても、両親は「そんなことを研究して何になるんだ」と反対していたんです。

でも、ぼくが諦めずに頑張り続けている姿勢を見てくれていて、いまでは心から応援してくれています。家族の支えなしではここまでの研究成果を挙げることはできなかったと思います。

とはいえ、微生物研究はぼくにとって「やりたいこと」ではあったけれど、決して「向いているもの」ではなかった。向いているか向いていないかにかかわらず、やりたいことを自らの意志で選ぶということ──それこそが大切なのだと、最近はよく思っています。

──最後に、これからの目標を教えてください。

いま進めているのが、2020年の東京オリンピックまでに23区の微生物をサンプリングしておくことです。オリンピック開催時に世界中の人が東京に訪れた際に、どのような遺伝子や微生物が持ち込まれたのかという変化を把握できるように、いまいる微生物を網羅的に把握しておきたい。その微生物マップが都市における公衆衛生の対策、感染症の拡大防止の鍵になるかもしれません。

基本的には目の前のことに集中するタイプなので、2年先、3年先のことまではそこまで考えていません。ただ、いまの研究を続けていきたいという漠然とした想いだけはあって。そのためには大学教員になるか、あるいは都市環境微生物に関連したビジネスで起業するのがいちばんの方法なのかな、と思っています。



Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Healthcare & Science」カテゴリーで選出された、GoSWAB代表の伊藤光平以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。



伊藤光平◎1996年山形県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部4年(休学中)。都市に生息する微生物を調査し、人とのかかわりを解明するプロジェクト「GoSWAB」代表。

文=吉田彩乃 写真=帆足宗洋(AVGUST)

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