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ポジティブなものづくり

──どんなことを考えながら、こうした作品をつくっているのでしょうか?

なによりも、「そんなことができるんだ」という驚きのあるアイデアを発信したいですね。その驚きと「よく考えると理にかなっている」という合理性をセットで発信すること──そうすることで、新しい視点で物事を見て、同じように新しいアイデアを発信してくれる人が出てきてくれればと思います。常識的に不可能に思えることでも、アイデア次第で実現できることを証明していくことが大切だと考えています。

また、「技術が心豊かな未来に繋がる」というビジョンも広げたいです。RCAのスペキュラティブデザインのプロジェクトは、ディストピアな未来を問題提起するのがメインストリームだと感じます。でも、ぼくは最終的にポジティブなトーンでものをつくりたい。たとえばAMPHIBIOの場合なら、「少し水面が上昇して都市が水没しても、 知恵次第で心豊かに生きていける」というように。

──RCAでの研究の次は、どんな活動をしていくのでしょうか?

AMPHIBIOに関しては、事業化も視野に入れながら日本またはロンドンの研究機関と共同で開発を継続することを目指しています。この作品は、RCAと東京大学がともに立ち上げた「RCA-IIS Tokyo Design Lab」と共同で行ってきたプロジェクトなのですが、それを続けるためにも設備が整っている環境にいたいなと。先端研究とデザインの融合を今後も続けていき、刺激的な成果を生み出していく予定です。

ひとつの理想は、ロンドンと東京の2拠点を行き来するワークスタイルでしょうか。日本の方がリソースを集めやすかったり、先端研究を扱う施設にアクセスしやすかったりというメリットがある一方、ロンドンのほうがデザインに対する理解があり、実験的な作品も受け入れられやすい。2つの領域や拠点を行き来するなかで、その中間にいちばん面白いものが眠っているケースが多いと感じています。あとは、純粋にロンドンが好きなんです(笑)。



Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Healthcare & Science」カテゴリーで選出された、マテリアルサイエンティスト/バイオミミクリデザイナーの亀井潤以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。



亀井潤◎マテリアルサイエンティスト/バイオミミクリデザイナー。1990年大阪府生まれ。東北大学で自然界のデザインを工学に応用する「バイオミメティクス」を学んだ後に、2015年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に進学。2017年には、RCAと東京大学生産技術研究所が共同で設立したRCA-IIS Tokyo Design Labにて数々のプロジェクトに携わる。人の息からつくる真珠、水生昆虫の呼吸法を応用した人工エラ、火星を人類が住める環境に変えるためのバイオフィルムなど、「自然と寄り添う技術」をテーマにさまざまな作品を手がける。
http://www.junkamei.com/

文=川鍋明日香 写真=モジュミル・ブレス

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