ビジネス

2018.08.31

売り上げの100%がアメリカ、28歳の「ポスト山田進太郎」#30UNDER30

Anyplace CEO 内藤 聡


──Anyplaceのアイデアに行き着いたきっかけは何だったのでしょうか?

自分自身を振り返った時に、引っ越しがものすごくストレスだということに気づいたんです。まず契約期間が決まっていてこれに縛られるのが嫌でしたし、いざ引っ越すとなると、手間とコストがかかります。

何でこんなに縛られて、移動しにくい状況になっているんだろう。どうやったらもっとフレキシブルに住むことができるのか。そんなことを考えていた時にふと思い浮かんだのが、「ホテル住まいにすれば良いじゃん」ということだったんです。

ホテルであれば家具やインフラも整っていて、出たい時に出て入りたい時に入れるようにすれば便利だな、と。何よりエアビーアンドビーの台頭で「住む」ことと「泊まる」ことの境界線が曖昧になってくる中で、このアイデアはチャンスがあると考えていました。

従来は「泊まる」場所を考えた際、基本的にホテル一択だった。それがエアビーアンドビーが普及したことで、人の家にお金を払って泊まるという選択肢が生まれたんです。

反対に「住む」場所だって必ずしも家でなくてもいいのではないか。特に近年は物を所有せずに借りたい時だけ借りればいいという考えが広がってきています。ホテルが空き部屋を安く提供してくれて、そこに住みたい人が自分以外にもいれば成立すると思いました。



ウーバーの初期投資家も支援。日本人でもやれると証明したい

──リリースの当初から手応えのようなものを感じていたのでしょうか?

手始めにサンフランシスコ内のいくつかのホテルに電話をしてみたところ、月に1600ドルで貸してもいいという答えが数軒から返ってきました。市内のワンルームアパートの場合は平均でも3000ドル以上かかってくるので、破格の値段です。

そこで、「Weebly(ウィーブリー)」というウェブサイト製作ツールを使って簡易版のサイトを立ち上げました。まず、ホテルのスクリーンショットと値段だけを載せて。それを掲示板のようなサービスに掲載したところ、長期で住みたいというお客さんがついて収益が上がった。そのときに「これならいけるんじゃないか」と思いましたね。

Anyplaceのビジネスモデルはシンプルで、料金の10%を手数料としてもらうというもの。家賃は単価も大きいですし、毎月必ず発生するものなので上手く仕組みを作れれば安定したビジネスになります。実績ができるとそれをもとに営業もできるので、登録してくれるホテルも増やしやすいし、ホテルが増えればユーザーもついてくる。そうやって少しずつ形ができていきました。

その中で僕たちにとって大きかったのが、ウーバーの初期投資家であるJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏から投資を受けられたことです。ダメ元でメールをしたら返信が来て、直接会うことになって。ミーティングの時間は15〜20分くらいだけ。

しかも、銀座の寿司の話など雑談ばかりするものだから正直不安だったんですけど、アメリカでまだ何も成し遂げていない自分たちを信じて投資をしてくれました。

これでようやくスタートラインに立てたんだな、と。本当に感謝しかないですし、サンフランシスコでもやっていけるんじゃないか、と少し自信にもなりました。
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文=大崎真澄 写真=Christie Hemm Klok

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