「5秒以上見つめたらセクハラ」 ルールの明文化は社会にどう影響する?

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日本でも、外資企業では電話やメールの内容を会社が確認するなど、企業側が積極的に事前介入します。ビザ・ワールドワイド・グループがハラスメントを見かけた際の報告を義務化するなど、企業がハラスメント対策を積極的に制度化しています。

また、最近はハラスメント対策につながるWebサービスも登場しています。ハラスメント通報アプリ「カリスト」は、匿名で被害内容を報告すると、ほかの人からも同じ相手からの報告があると通知が入ります。その後、その人を正式に報告するかどうかを選択できるんです。被害に遭っているのが自分だけでないとわかってから報告できるので、被害者が勇気を出しやすい。

また、日立製作所はウェアラブルセンサーを用いた実験で、業績の高い部署はそうでない部署に比べて幸福度が高いことを明らかにしました。こうしたデバイスもハラスメント被害者の発見などに使えそうですね。

──社内ルールやテクノロジーでセクハラを起こしにくい風土にしたり、事前介入することで、被害者が声を上げやすい環境をつくれるといいですね。とはいえ、やはり男性からすれば何がセクハラになるのかという線引きは難しい気がします。よく「受け手がセクハラだと感じたらセクハラ」と言われますが……。

実は、そうした風潮は海外では一般的ではありません。海外では何がセクハラであるという線引きがきちんと決まっています。日本でも企業が独自に決める方がいいという意見もあります。

ネットフリックスは「他人を5秒以上見つめてはいけない」という社内ルールを設けました。ほかに、「3回断られているのに4回目に誘ったらハラスメント」と規定している企業もあります。セクハラの基準と懲戒を明文化しているんです。

ハラスメント対策に力を入れる企業は、これから明確な社内ルールを作ることが増えるでしょう。日本人としても、線引きがあった方が判断しやすいのではないでしょうか。

──たしかに、「女性が嫌がることをするな」と言われるよりも、「3回誘ってダメなら諦めろ」の方が判断しやすいですね。最後に、白河先生はこれから企業をめぐるハラスメントの状況は良くなると考えていますか。

難しいですが、良い傾向にあると思っています。いまの若者は年長者に比べて平等意識がありますし、おかしな風土の会社をスパッと辞める傾向にあります。

これまで多かった、最初は疑問に思っていたとしても徐々に会社の風土に慣れることでハラスメントをする、巻き込まれるというケースは少なくなるはずです。

「ブラック企業」という言葉の流行や、SNSなどを通じて昔よりも他社の状況を知ることができることが大きいですね。

これからは法律の厳格化にあわせて企業ルールも設けられていくはずですが、企業は「適法か」どうかを基準にしてルールをつくるようでは不十分。

まずは「ハラスメントは許さない」と経営者が宣言し、社員やその関係者にとって「何が職場にとって適切か」を念頭におくべき。そうした企業が人気を集めるようになるのではないでしょうか。

文=野口直希

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