「仕事はできるけどセクハラする人」は会社からいなくなる

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──ハラスメントを受ける人はもちろん、してしまった人のキャリアに関わるからこそ、声をかけるべきだということですね。たしかに、職場の空気を変えられないのは、仕事のためだと我慢してしまうからかもしれません。
 
問題の根源にあるのは、多少のハラスメントよりも仕事を優先してしまうこと、つまりは「仕事に比べてプライバシーや人権は軽い問題だ」と心の奥底で思っていることです。

欧米ではハラスメントは人権の観点から語られるのが当たり前ですが、日本ではまだ職場の個人間のトラブルとして語られることがほとんどですよね。
 
どうしてこんな話をしたかというと、これからはハラスメントをはじめ、人権への関わり方がビジネスパーソンに必須のスキルになるからです。

例えば先日、日本ハムの社長がセクハラで辞任しましたが、このときはセクハラをされた女性の雇用主である航空会社から抗議が入ったといいます。会社からすれば、重大なリスク要因ですよね。
 
会社としては、もはやこうした人は「仕事はデキるけどハラスメントをする人」ではなく「リスク管理能力が低い=仕事ができない人」として扱わなければならない。昔よりも世間がセクハラに厳しくなった現在では、ハラスメントに対する管理能力が欠けている人は会社にとってそれだけで重要なリスク管理ができない人だと見なされるようになるでしょう。
 
男性にとって、ハラスメントは他人事ではありません。自分のキャリアに関わる重要な要素です。自分がハラスメントをしなくても、同僚のハラスメントを見過ごしていただけで、間接的に協力していたとみなされる可能性だってあります。
 
──仕事ができれば多少のハラスメントは許されるのではなく、ハラスメントをする時点でその人は仕事ができないとみなされるようになる、と。
 
はい。アクセンチュアグループでは働き方改革への施策にハラスメント対策を導入し、各部署にハラスメントを容認する空気があるかどうかを四半期ごとに調査しています。

その結果、長時間労働で生産性が低い部署にはハラスメントをする人がいることがわかったのです。海外企業や外資系企業ではハラスメント対策はかなり厳しくなっています。
 
成果重視でハラスメントが横行していたと言われるウォール・ストリートも、リーマンショック以降は厳しくなりました。そうしなければ優秀な人材が来ないからです。事前に介入してハラスメントを防ぐために、社員のメールや電話の内容を確認することも当たり前です。
 
現在の日本企業ではコンプライアンスの一環としてハラスメント対策を推進していますが、生産性向上のために、働き方改革として考えるという観点も必要になるかと思います(9/7公開の後編に続く)。

文=野口直希

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