例えば、米ソフトウェア企業・Unity Technologiesが開発した「Unity」は、世界約650万人のゲーム開発者が使用するゲーム制作エンジンだが、人工知能が取り入れられたことによって、さまざまな産業の課題を解決するツールとなりつつある。同社マシンラーニング部門のプロダクトマネージャーであるJeffrey Shih氏は、海外メディアの取材に答え、Unityの未来について語っている。そのなかで特筆すべき応用事例として語られたのが、「自動走行分野」だった。
Shih氏曰く、自律走行車を開発しようとしている企業には共通した悩みがあるという。それは、「走行テストの量」である。走行の質を上げるためには膨大な量のテスト走行が必要だ。しかし、テストをこなすには多くの時間と費用がかかる。そこでShih氏はUnityの利用を推す。
マシンラーニングが搭載されたUnityで作成した仮想空間でテストを行えば、効率的に自動走行システムの学習を行うことができるというのだ。実際、すでに「世界各国の自動車メーカーと協力が進んでいる」そうで、今後Unityの「データ生産能力」を映画、建築などその他の分野にも生かしていくとしている。
自社AIの応用、また源泉技術の開発に興味を持つゲーム企業は他にもある。「リネージュ」などでお馴染みのNCSOFTは、人工知能開発のためにAIセンター、自然言語処理センターを運営している。両組織はCEOキム・テクチン氏の直轄で、所属する研究者は100人以上。ゲームに関する人工知能だけでなく、画像認識、自然言語処理などあらゆる源泉技術の開発が進められているという。
いまや中国を代表するAI企業となったFace ++の起業の契機となったのも、「Crows Coming(乌鸦来了)」というゲームだった。顔認識技術が採用されていた同ゲームは、App Storeの中国無料アプリランキング3位となり投資誘致に成功。その後、同社の技術は政府や公安が利用する犯罪検知システムに使われるようになった。
ちなみにゲームとは少し異なるかもしれないが、日本でも話題となっている動画アプリ「TIKTOK」の開発企業であるByteDanceも、人工知能に関する源泉技術を多数保有している。被写体の動きや体の部位を認識して、「天気をコントロールするスタンプ」などがその代表例となる。
今後、ゲーム企業各社がAI産業に及ぼす影響力は増していくのか。注目していきたい。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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