ワインが生み出す、最高な人生 | 出井伸之

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏

人生は岐路の連続。最良の選択でチャンスを呼び込むためには、自身と深く対話し、自分の中にある幸せの価値観を知ることが重要である。この連載は、岐路に立つ人々に出井伸之が送る人生のナビゲーション。アルファベット順にキーワードを掲げ、出井流のHow toを伝授する。

今回は、Wine(ワイン)について(以下、出井伸之氏談)。


フランスに住んでいた時、とにかくワインをよく飲んだ。レストランで、ワインバーで、自宅で、友人の家で、いろいろなワインをたくさん味わった。大好きなフランス料理とワインを本場で思い切り楽しめることは、実にありがたいと思いながら過ごしていた。

ワインはコミュニケーションツール

スコットランドにはウイスキー、中国は紹興酒、日本は日本酒というように、アルコールというのはその国の文化の象徴だ。お酒を通して、空気と水と土地そして文化が折り重なって見えてくる。種類が豊富な国は、文化も色濃いように思う。

私は、フランスでワインを飲むごとにその土地や文化について勉強し、徐々にフランスという国を理解していった気がする。背後にあるものを学んだからこそ、さらにワインが好きになったのだと思う。

いつ、どんなシーンで、誰と飲むかで、開けるワインを選ぶ。飲む楽しみは、選ぶ時から始まっていて、どれにしようかと悩む時間はまた格別だ。ビジネスディナー、友人との食事、あるいは家族と……100シーンあれば100種違ってくる。選んだワインを手に、今日はこういう話をしようとイメージをふくらませる。そしてディナーで何もかもがぴったり合うと、そこには最高のコミュニケーションが生まれ、最高の時間となる。

100のワインストーリー

ワインにまつわる思い出を、いくつか話したいと思う。

まだフランスに住んでいた時、パリのビストロで一人でディナーをしていると、隣のテーブルで数名の若い男性たちが、それぞれ手に持つワインを選んだ理由を語りながら食事をしていた。別れた彼女との思い出のワインなど、様々なストーリーがあって、私は気になり耳をそばだてて聞いていた。そのうちに一人が「こっちにきて一緒に飲まないか」と言ってくれたので、その夜は彼らと同じテーブルで、実に楽しく語らった。

ワインがきっかけとなるこういう出会いは忘れられない。いまでも鮮明に覚えている。

だいぶ前のことになるが、軽井沢ゴルフ倶楽部を通じて友人になった三井公乗さんが一時期ハワイに移住することになり、出発前に会うことになった。すると三井さんはワインコレクションの中から、ロマネ・コンティを10本くださると言うのだ。私は驚いて「いただくのではなく、お預かりします」と伝えた。

それから1年ごと、三井さんとご友人をディナーにご招待してロマネ・コンティを1本開けるという会を10年間続けた。ワインをきっかけに、素晴らしい10年を過ごすことができた。
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インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 写真=小田駿一 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=Union Square Tokyo

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出井伸之氏のラストメッセージ

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