日本初の子育てファンドが見抜いた「学童保育の価値」

託児機能付きワーキングスペースを運営するママスクエア、保育園向けのIoTソリューションを提供するユニファ、民間学童保育を運営するウィズダムアカデミー、人工知能を活用したタブレット教材の開発・提供をするCOMPASS─。

これら企業は、新生企業投資が新生銀行と共同設立した「子育て支援ファンド」の投資先だ。同社は2017年1月、経済的リターンと社会的リターンの両立を目的としたインパクト投資の手法を用いるファンドを、日本の民間金融機関として初組成。規模は5億円。子育て環境の整備・改善や就労に繋がる事業を手がける「子育て関連事業」へ投資。その仕掛け人が高塚清佳と黄春梅だ。

「子育てをしながら仕事をしていて強く思うのは、子育て関連産業には、着実なニーズがあるが、その機会をとらえたビジネスモデルがまだ十分に構築されていない。社会的なニーズに応える起業家の支援に、我々のようなプライベート・エクイティの手法はいかせる」(黄)

なぜ、子育て関連事業に、インパクト投資が必要なのか──。投資先のウィズダムアカデミー社長の鈴木良和は話す。

「子育て産業は、上場企業でも助成金を活用する事業者が多い。しかし、ベンチャーの場合、公的資金では限られた成長しか見込めない。中期的な成長にもなるため、足並みを揃えてくれる投資家である必要もある」

鈴木らは現在、全国18の学童保育施設を運営。児童を学校までスタッフが迎えにいく、夜間最長22時までの預かりに対応、学童に預けている間に多様な習い事ができるなど、きめ細かいサービスが、共働き家庭から支持されている。その価値を見抜き支えるのが、子育て支援ファンドだ。

高塚と黄は今後、さらに大きなファンド組成を目論む。2号ファンド組成ではさらに、社会を巻き込むべく、外部の投資家、大企業、スタートアップ、政府機関など、あらゆるプレイヤーとの連携を思い描く。

「子育てを含めた働き方の問題は、どの大企業にとっても他人事ではなく、問題意識は高い。意欲ある起業家の方々には、出資の有無を問わず、顧客紹介や事業計画作成の支援もしている。ファンドを起点に、日本の子育て関連市場をもり立てたい」(高塚)

文=山本隆太郎 写真=小田駿一

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