ただ、はじめから腕時計がこの形で登場したのかというと、そうでもない。もともと戦争中に懐中時計を紐で腕に巻き付けたのが発端だと言われているとおり、やはりスポーツウォッチっぽい方向性が強かった。腕時計草創期にアール・デコ様式という一大ブームがあったりもした。
ただ、男性は当然スーツにあうものをチョイスする。そうやっていくうちに、いまの薄型のドレスウォッチが定着していったのだろう。日常生活の中で磨かれていったからこそ、定着したのである。
そんなドレスウォッチは、世代を超えて愛される。その造形は、シンプルでエレガント、そして薄型というのが大前提。その多くが普遍のフォルムを持っており、そこにはブランドの時計作りに対する美学や哲学が詰まっている。そして、それ自体がブランドを体現しているので、すべてのモデルのベースにもなるのである。
それゆえに、多くのブランドが毎年ラインナップされ、今年も当然、良作が数多くラインナップされている。ビジネスパーソンの基本である、スーツスタイルにもっともフィットしたモデルは、まさに紳士の腕時計なのである。
PATEK PHILIPPE / パテックフイリップ
ゴールデンエリプス
今年50周年を迎えた、エリプス(楕円形)ケースが特徴的なモデル。縦横の比率は、神聖なる比率とも呼ばれる黄金分割。自動巻き、18KRGケース、34.5×39.5mm 336万円 問/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109
HERMÈS / エルメス
カレ アッシュ
数ミリ大きくなって登場。インデックスのアラビア数字はオリジナルのタイポグラフィで、一桁の数字に「0」を加えることで、さらに洗練された調和をもたらしている。自動巻き、SSケース、38×38mm 77万5000円 問/エルメスジャポン 03-3569-3300
TISSOT / ティソ
ティソ ヘリテージ バナナ
カーブした長方形のケースにタマネギ形状のクラシカルなリュウズ、アール・ヌーヴォー調のアラビア数字インデックスなどが特徴的なモデル。クォーツ、SSケース、49×27mm 4万3000円 問/ティソ/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7361
IWC / アイ・ダブリュー・シー
IWCトリビュート・トゥ・パルウェーバー“150イヤーズ”
回転ディスクに記された大型の数字を用いて、デジタル形式で時と分を表示した画期的なモデル。上が「HOURS」で下が「MINUTES」を表記。ダイヤルはラッカーを塗り重ねて仕上げている。手巻き、18KRGケース、45mm径 395万円 問/IWC 0120-05-1868