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2018.08.24

新興国からの資本逃避が本格化するか[週間ビットコイン動向]

FabrikaSimf / Shutterstock.com

8月中旬からここまでのビットコイン価格は、14日に66万円(フィスコ仮想通貨取引所、FCCE)まで下落するなど年初来安値(6月29日、64万7525円)に接近する場面が見られた。

米証券取引委員会(SEC)がビットコイン建てのETF(上場投資信託)を承認するかどうかが足元の手掛かり材料となっているが、金融市場全体の資金の流れもビットコイン価格に対する影響度を増してきそうな状況にある。米国とトルコの緊張関係だ。

米国人牧師アンドリュー・ブランソン氏の釈放を巡る問題をきっかけに、米国とトルコは激しいやり取りを行っている。米国人牧師は2016年に発生したトルコでのクーデータ未遂事件に関わったとのことから、トルコのエルドアン大統領は圧力を弱めることはできない。一方、トランプ大統領も11月に間選挙を控えていることから一歩も引く素振りは見られない。

そのようななか、ビットコインは対トルコリラで、7カ月ぶりに高値を更新した。米国が8月1日に対トルコ制裁を発動したことをきっかけに、トルコ経済の先行き悪化懸念が強まり、リラが急落。10日には、米国による追加関税でリラ市場は混乱し、1日に20%急落する場面も見られた。

一方、エルドアン大統領がトルコリラ安是正の利上げを拒否し続けている状況下、リラは対ドル、対円で下落傾向が続いており、13日には対円で一時15.4631円まで円高リラ安が加速した。トルコ国民が自国のリラを売却しビットコインに変える動きは増えていると思うが、これだけリラが下落すれば相対的に他の資産の価値が高まるのは当然だろう。

欧州債務危機の際、キプロスやギリシャからビットコインに資産を移す動きが強まったことで、ビットコインの時価総額が急速に膨らんだ経緯はある。ただ、当時はユーロという巨大通貨への信任が低下して発生した事象であることを考慮すると、流通量の少ない通貨であるリラの資金移動だけではビットコインへの影響は限定的と考える。

金利を引き上げて防衛策をはかっているアルゼンチンペソ、インドネシアルピーといった他の新興国通貨に急速な下落が波及するかが注目となろう。新興国通貨の動向次第では、資本逃避(キャピタルフライト)の動きが本格化する可能性もある。

足元では、SECがシカゴ・オプション取引所(CBOE)以外が申請したビットコインETFを却下したと伝わっている。CBOEの結果は9月との観測だが、市場の期待感はさほど高まっていないことで、CBOEも却下というニュースが早い段階で伝わってもさほど影響はないとみる。

もっとも年初来安値に接近している状況下、安値を切ってくると売り圧力が強まる可能性はある。引き続き想定レンジは60万円から75万円とする。

連載:「仮想通貨」マーケット実況
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文=田代昌之

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