ウォルマートの電子書籍ストアは、楽天Koboが取り扱う600万以上の電子書籍、オーディオブックなどを提供する。また、楽天Koboの電子書籍を持っていない人でも、両社が共同で提供する無料アプリ(iOS、アンドロイド)を通じて、コンテンツを楽しめるようにした。オーディオブックの月額料金は9.99ドル(約1100円)で、アマゾン「オーディブル(Audible)」の14.95ドルを大きく下回る。
ウォルマートと楽天の提携は、今年初めに発表されていた。ウォルマートはその他にも、アマゾンの人口知能(AI)アシスタント「アレクサ(Alexa)」との競争をにらんでグーグルと提携。スマートスピーカー「グーグルホーム」で買い物ができるサービスを開始する予定だ。また、クラウドサービスではマイクロソフトと契約し、アマゾンの「アマゾンウェブサービス(AWS)」は利用しないことを決めている。
本当の狙いは新たな「顧客層」
すでに市場シェアの大きいアマゾンの電子書籍「キンドル(Kindle)」との戦いは、ウォルマートにとって難しいものになるかもしれない。調査会社ユーロモニターのデータによれば、米国の電子書籍市場におけるキンドルのシェアは83.6%。2位につけるKoboの13.4%に大差をつけている。
だが、ウォルマートが楽天Koboとの提携を通じて本当に目指すのは、より多くの電子書籍を販売することではない。真の狙いは、従来の主要な顧客であるディスカウント商品を求める消費者層や低所得層ではなく、高額商品も購入する層をより多く呼び込むことにある。
アマゾンの成功の鍵を握っているのは、同社のエコシステム(商品販売とサービス、プライム・ビデオなどその他の特典を提供)に高額商品でも購入する1億人以上の「アマゾン・プライム」の会員を取り込んできたことだ。これまでの複数の調査結果から、消費者の一部はすでに、商品を探す際にはまずにアマゾンで検索をすることが分かっている。