ライフスタイル

2018.08.26 13:00

世界遺産の地が育む「伝統のワイン」と「これからのワイン」

ポルトガル北部のポルト、ドウロ渓谷に広がるブドウ畑


革新的な生産者ラモス・ピントと辛口ワインの将来性
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今回の滞在では、1880年に設立された歴史ある生産者、ラモス・ピント(Ramos Pinto)を訪問した。ポートワインのイギリスへの輸出が主流だった頃からブラジルにも販路を拓くなど、独自のアイデアでビジネスを拡大した老舗だ。

近年では、多数のブドウ品種から最適な品種を選定するためのリサーチを行い、持続可能な栽培方法をいち早く取り入れるなど、ポートワインの発展に貢献している。また1990年からは、同じく革新的なビジョンを持つシャンパーニュメゾンのルイ・ロデレールがオーナーとなり、さらに高品質なワインを目指している。


現在は、5世代目のジョルジュ・ロザース氏が社長を務め、ジョルジュの従姉妹のアナ・ロザース氏がマスター・ブレンダーを務める
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ラモス・ピントのセラーはヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにあり、そこでは見学ツアーや試飲に参加できる。併設のミュージアムも素晴らしい。ポルトとラモス・ピントに関連した美術品の展示を見ながら、ポートワインの歴史について学ぶことができる。

ドウロ渓谷まで足を伸ばすことができるなら、ブドウ畑も訪問したい。ラモス・ピントが所有する「Quinta Bom Retiro」は一般に公開されている。手作業で石を積み上げて作った段々畑は圧巻の景観だ。急勾配の畑を歩くと、いかにドウロでのブドウ栽培が大変かがよくわかる。

知る人ぞ知る辛口ワイン

ドウロのワイン産地では現在、伝統的なポートワインに加え、辛口のスティル・ワイン作りにも力が入れられている。2003年には、「ドウロ・ボーイズ」という5生産者のグループが結成され、その普及活動をおこなっている。

中でもラモス・ピントは、1990年から辛口ワインの生産を始めた先駆者。1990年代の赤ワイン「Duas Quintas Reserva」を垂直試飲(生産年の異なる同じワインの試飲)した。長い熟成により、タンニンの角が取れ、舌触りも滑らかになり、熟成によるレーズン、タバコ、ダークチョコレート、スパイス等のフレーバーが何層にも重なり、その熟成ポテンシャルに感銘を受けた。


「Duas Quintas Reserva」1990年代の赤ワインの垂直試飲

ドウロには、何種類もの土着品種が植えられている。さらに、栽培エリアが広く、様々な微小気候(ミクロクリマ)や多様な土壌、地勢、標高から成るため、幅広いスタイルのワインを生み出す可能性がある。

いまはまだ知る人ぞ知る存在で価格も抑えられているが、辛口ワインに合った栽培技術のリサーチ、モダンな設備や醸造方法を取り入れるなど刷新が進んでおり、これからの成長と発展に注目したい。


ポートワインの伝統的な古樽

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文=島悠里

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