テクノロジー

2018.08.24 08:00

本田圭佑も注目 日本から巻き起こす「コインロッカー革命」#30UNDER30

初期に立ち上げたオンデマンド収納サービスで使った収納ボックスの前に座る、工藤慎一



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それで日本全国のコインロッカーを調べてみると、スーツケースを預けられる大きさのコインロッカーは全国で22万個。一方で、必要とされる数は50万個です。あと30万個のコインロッカーを作る必要があります。でも、駅前の土地にスペースはありません。

じゃあ、どうしようか。そう考えた時に、街中のカフェに荷物を預けられるシステムがあればいいのではないかと思って。それが荷物一時預かりシェアリングサービス「ecbo cloak」の始まりです。思いついた時は「このサービスだ!」と感動したのを今でも覚えています。そしてアイデアからローンチまで4カ月、2017年1月18日にecbo cloakをリリースしました。

自信があるサービスですが、一部の人からは「日本だけでなく、海外でもパクられやすいサービスなんじゃないか」と心配されることもあります。でもそれは裏を返せば、シンプルなプラットフォームで、スケールしやすいサービスだということ。導入に必要なのはスマートアプリと空きスペースだけですから、リソースさえあれば、グローバルに十分展開できます。
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サービスの展開は10年先まで見えていますし、ecbo cloakなら世界で勝負できると確信しています。

ecbo cloakは順調にグロースしていき、国内では1000店舗に広がりました。そして2018年2月からJR東日本・JR西日本さんと日本郵便さんと提携を行いました。全国に2万4千局ある郵便局、国民の移動の中心である駅で展開できる見込みがあるのは、かなり大きいですね。サービスの基盤はひとまず固まったので、あとはオペレーションの問題です。

初めて、JR東西から投資を受けたベンチャー企業に

──なぜ、ひとつのベンチャー企業がJR・日本郵便と提携できたのでしょうか?

普通だったらカッコ良く「僕の実力ですよ」と言いたいですが、正直に言うと運。流れがよかったですね。2017年にJR東日本・西日本さん、日本郵便さんたちがオープンイノベーションを試みようとしていました。同年1月にecbo cloakのスタートが重なったのは大きかった。

ただ一方で、ずっと前からJRさん・日本郵便さんとの提携は考えていました。特に電鉄会社と提携しなければ、この業界で圧倒的な地位を築けないと思ってましたから。いつも提携の機会を探っていました。その結果、東と西のJRがひとつのベンチャー起業に投資する、はじめての会社になれたのだと思います。



──最後に、今後の展望について教えてもらえますか。

現在、ecbo cloakが導入されている店舗数は1000店舗です。それを今年度中に1万店舗にしたいですね。無理な数字に聞こえるかもしれませんが、JRさん、日本郵便さん、その他にも大手企業さんの各店舗で展開していく予定があります。現実的に狙える数字です。1万店舗まで広がれば、日本中どこでも荷物預かりできる環境になるので、早く実現したいですね。

もちろん、日本国内の展開で終わるつもりはありません。2025年までにグローバル500都市で展開したいと思っています。ニューヨーク、パリ、香港、シンガポール、台湾、ソウル……。思いつく都市全てに普及させたいですね。現在のウーバーのようになっていたいです。

そして今後も「モノの所有」からサービスをブラさずに進んでいきます。ユーザーはスマホアプリを使って、グーグルマップのように住所を入れ、検索するだけ。世界中どこに行っても、現地の言葉がわからなくても、簡単に荷物預かりをできるようにしたいです。それが当たり前になっているような、面白い世界を実現させたいと思います。


Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Business Entrepreneurs」カテゴリーで選出された、ecboの工藤慎一以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。



工藤慎一◎1990年生まれ マカオ出身 日本大学卒。ウーバージャパン株式会社の立ち上げ時のインターンを経験後、2015年6月 ecbo株式会社を設立。オンデマンド収納サービス「ecbo storage」をβ版運営。2017年1月、カフェ、美容室、郵便局など多種多様な店舗の空きスペースを、荷物の一時預かり所にする世界初のシェアリングサービス「ecbo cloak」の運営を開始。ベンチャー企業の登竜門『IVS Launch Pad 2017 Fall』で優勝。

文=田中一成 写真=小田駿一

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