本田圭佑も注目 日本から巻き起こす「コインロッカー革命」#30UNDER30

初期に立ち上げたオンデマンド収納サービスで使った収納ボックスの前に座る、工藤慎一


──工藤さんはいろんな会社でインターンされていますが、なぜ起業せずに働くことを選んだのでしょうか?

起業するのであれば、グローバルに広がるようなサービスをつくりたかったんです。でも、会社やサービスをどうやってつくるか分からなかった。そのため、大学時代はいろんなIT企業でインターンし、仕事の経験を積もうと考えました。インターンをした企業の中で最も印象に残っているのがウーバージャパンです。



当時、社長を含めて社員がまだ3人しかいませんでした。渋谷の小さなオフィスからウーバージャパンは始まっていて。大学卒業後、インターンを経て、僕はウーバージャパンに入社しました。

ここで働けた経験は大きかったですね。ウーバーのサービスはとてもシンプル。ボタン1つ押せば、タクシーが来てくれる。世界中どこでも同じ仕組みで運営できます。だからこそ、サービスが世界中に広がったのだと思います。

僕がウーバージャパンにジョインした時は、それほど世界に普及していませんでした。でも、僕が1年半働いて退社する頃には、サービスの規模は世界100都市に広がっていました。今は世界500都市を超えています。

ウーバージャパンではサービスの作り方、世界への広げ方を学べました。そして創業期のタイミングで入ったからこそ、組織が急拡大する勢いを体験でき、組織がどう伸びていくか、を肌感覚で味わえました。この経験は起業後にすごく役立ちました。

その後ウーバージャパンを退社。2015年6月にecbo株式会社を創業しました。

四次元ポケットのように、モノの所有を自由にするサービスを

──ウーバージャパンでの経験から荷物預かりサービスをどう発想したのでしょうか?

まず、人類が誕生してから今日に至るまで、変わらないものってなんだろうと考えたんです。家に住むこと、衣服を着ること、移動すること。そして「物を持つ」ことも変わらないなと。原始人でも石器を持ちますからね。

物は価値がある一方で、増えれば増えるほど負担になります。居住スペースを圧迫したり、移動の際に重荷になったり。それをどうにか解決したい。物の所有を自由にできないかと考えました。具体的には物の管理プラットフォームをつくろうと思ったんです。

ドラえもんの四次元ポケットみたいに、物が全部入って、必要な時に取り出せたら楽だなと。そういうサービスをつくれればいいなと、そんな思いがあり、オンデマンド収納サービス「ecbo storage(エクボストレージ)」β版を立ち上げました。

──それから「ecbo cloak」はどう思いついたのですか。

最初はこのサービスでいけるんじゃないか。そんな思いもありましたが、現実は違いました。オンデマンド収納サービスは想像以上にコストがかかる。アマゾンのような巨人がやるのであればいいかもしれないですが、スタートアップがやるべき事業ではない。結局、オンデマンド収納サービスは一旦クローズ。その後は、次にどんな事業を手掛けようか、ひたすら考えてました。

なかなか良いアイデアが浮かんでこなかったのですが、ある出来事をきっかけに、今の事業「ecbo cloak」を思いついたんです。それは2016年8月、渋谷を歩いているときのことです。

渋谷の街を歩いていたら、いきなり外国人に声をかけられたんです。「スーツケースの入るコインロッカーが見つからないから、一緒に探してくれ」と。

僕も興味が湧いたので「いいですよ」と、外国人と一緒に渋谷を探しました。40分歩き回りましたが、結果、コインロッカーは見つからなかった。なぜかというと、渋谷のコインロッカーは1400個しかなく、スーツケースが入るコインロッカーは90個しかなかったんです。自分で1つずつ数えたのですが、これはすごい面白いデータだなと。
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文=田中一成 写真=小田駿一

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