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海の男/ホーンブロワー・シリーズ
セシル・スコット・フォレスター(著)
ハヤカワ文庫 820円+税/431ページ

◎セシル・スコット・フォレスター
小説家。1899年イギリスの外交官だった父親の駐在先のエジプト・カイロで生まれる。ロンドンの大学で医学を志すが中退し、文筆活動に入る。1926年、出世作『終わりなき負債』で世の中に知られるようになり、37年発表の『パナマの死闘』で〈海の男/ホーンブロワー・シリーズ〉開幕。第2次世界大戦中は英国情報省に入り海軍に従軍。そのときの体験が後の海戦作品を生み出した。また『アフリカの女王』は名作として知られ、映画化されて話題を呼んだ。1966年、移住先のカリフォルニアで死去。享年66。


岡本 和彦 ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役

 私が『海の男/ホーンブロワー・シリーズ』に巡り合ったのは、今から40年ほど前―。出張帰りのロンドン・ヒースロー空港でこの本に出合いました。物語は、簡単に言えばナポレオン戦争時代の英国海軍の軍人、ホレーシオ・ホーンブロワーの出世物語です。全11巻からなるシリーズは、主人公ホーンブロワーが見習い士官として海軍に入隊するところから始まり、英国植民地の総督に出世するまでの話です。

 私は、すでに20回以上、繰り返し同シリーズを読んでいますが、その理由は大きく2つあります。
 ひとつは、“メッセージの伝え方”です。物語には、上官や海軍省のお偉方に主人公が作戦の提案書や報告書を書く場面が多数出てきます。「誰に何を伝えるのか」「期待する効果」「必要な情報」「全体のトーン」……。これは報告書であれ、提案書であれ、コミュニケーション形態を問わず、常に考えるべきポイントです。
 本書を読んでいくと、主人公の描写の中から読み取れる、“微妙な心の葛藤”や“読む人の心情を考えていること”がわかります。例えば、主人公の機転が利いた作戦指導により大成功を収めた戦果を報告する場面があります。目的は、自分の成果自慢ではなく、「どの作戦が成功を生み出す効果があるのか」を結果とともに報告することです。
 しかも、報告書は上官宛てだけではなく、海軍省の官報に掲載することで国民全体も情報の受け手となるわけです。複数の異なる相手に、正しく情報を伝達する必要があります。
 祖国で待つ軍人家族に危険を見せて不安をかき立てないよう、細かい心情的な配慮も怠りませんでした。「受け取る側の視点にたったメッセージを発信する」点は大変参考になりました。

 2つ目は、“リーダーシップの発揮”です。主人公は、単なる勇猛果敢な軍人ではありません。逆にかなり繊細な神経の持ち主で、固定観念にとらわれず、常に広い視野で状況を多面的に判断し、新しい作戦を展開していきます。やみくもにリスクをとることをしてはいけませんが、リーダーは、時には厳しいリスクの選択を迫られることがあります。
 そんなとき、主人公は、常に、可能な作戦選択肢について、予想される成果とそれぞれの選択に伴うリスクをはかりに掛けて判断しています。ビジネスにおいて、リーダーとして必要なことだとあらためて感じさせられます。
 上記の2つに加えて、全体が大変きれいな英語で書かれているので、その点でも非常に勉強になります。ぜひ、機会があれば原書で読んでいただくことをお勧めします。

岡本 和彦

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