欧州4位の航空会社であるエールフランスKLMグループは現在、特に大きな壁に直面している。ジャンマルク・ジャナイヤック前CEOは今年5月、経営陣と労働組合の交渉が行き詰まったことを受け辞任。新たに就任するスミスにとって、最大の仕事は同社の建て直しと、不満が募る従業員との関係修復だ。エールフランスでは2015年、人員削減に抗議する従業員らが同社幹部のシャツを破り取る騒動が起きている。
大きな影響力を持つ航空業界ブロガー、ブレット・スナイダーは「ベン・スミスには、エールフランスKLMの新CEOとしての幸運を祈ろう。残念なことに、同社を立て直すためにはそれだけでは足りない。労働者たちが待ち構えている……」とツイートした。
スミスは既に、冷遇を受けている。英紙フィナンシャル・タイムズは17日、エールフランスの9つの労組が共同声明を出し、新CEOへの不満をあらわにしたと報じている。声明では「1933年から仏企業であり続けてきたエールフランスが、競合の業界グループに後押しされる外国人指導者の手に落ちることは信じ難い」と述べている。またKLMオランダ航空の操縦士らは、スミスの就任に合わせてストライキを実施する構えを見せている。
スミスは、労組と市場環境の間で大きな課題に直面している。欧州の航空大手各社は、アイスランドのWOWエアやノルウェジアン・エア・シャトルなどの国際格安航空会社(LCC)との厳しい競争により、コスト削減と運賃引き下げを余儀なくされてきた。ブリティッシュ・エアウェイズでは、コスト削減と収益性改善のため、ブエリング航空のアレックス・クルーズ前CEOが会長兼CEOに就任した。コスト削減は利用客の間で不評を買ったものの、収益はいくらか上がっている。
エールフランスKLMグループの状況はもう少し複雑だ。労組と経営陣は、同社が実施した経費削減策を巡って長年対立してきた。また、エマニュエル・マクロン仏大統領が近年実施した企業優遇政策により、対立は悪化するばかりだ。労組は既に、新CEOを手荒く歓迎する決意を固めており、スミスの前途は多難だ。