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シネマの女は最後に微笑む

(左)ジュリア・ロバーツ、(右)メリル・ストリープ(Photo by Jeffrey Mayer/WireImage)

お盆の帰省シーズンも終わり、ほっと一息ついている人も多いのではないだろうか。道路の渋滞や交通機関の混雑、移動の疲労もさることながら、そもそもあまり積極的に帰省したくないという声も最近は聞かれる。

もっとも多いのは、既婚女性の「義実家に行きたくない」。姑に愚痴や厭味を言われる、何かと気を使う、家事労働をさせられる、親戚付き合いが苦手など。自分の実家でさえ、親が口うるさく、将来のビジョンなどについてあれこれ聞かれるのが嫌なので、なるべく行きたくないという声がある。

親は親で、久しぶりに子どもに会うチャンスにあれこれ聞こうと手ぐすね引いて待っていたりするものだから、それを察知する方は増々憂鬱になるということだ。

離れて住む親と友好的な関係を築いておきたいと思っても、忙しさに紛れてどんどん足が遠のき、よほど緊急な用がない限り郷里に足が向かないケースは多い。そして、疎遠だった両親の片方が亡くなったりして、残された親を引き取る段になってから、さまざまな擦り合わせに苦労しているという人は筆者の近辺にもいる。

今回取り上げるのは、久しぶりに再会した家族の秘密や隠された内心が徐々に明らかになっていく過程を、ブラックなテイストで描いた『8月の家族たち』(ジョン・ウェルズ監督、2013)。ピューリッツァー賞を受賞した同名戯曲の映画化で、支配的な母を演じたメリル・ストリープとその長女役ジュリア・ロバーツの凄まじい応酬が話題となった。

似ているからこそ対立する?

オクラホマの広大な草地の中にポツンと建つ古い屋敷に住むのは、初期のがんを患っているヴァイオレット(メリル・ストリープ)と、詩人の夫。精神不安定な妻に疲労しアルコールに依存している夫は、妻の身の回りの世話にネイティブ・アメリカンの家政婦を雇った後、失踪する。

まず駆けつけてくるのは、独身一人暮らしの次女アイビーと、ヴァイオレットの妹であるマティ叔母と夫。太ったマティは、親戚に一人はいそうなお喋りおばさん。さらに、長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)が14歳の娘と別居中の夫を伴って登場する。

バーバラは早速、ヴァイオレットからこまごまと愚痴をまくしたてられ、内心ウンザリしながらもつい刺激されて言い返し口論に。この時点で、二人はどうやら似た者同士とわかる。

対してアイビーは、口数が少なく自己開示しない控えめな性格。ずっと遅れてフィアンセのスポーツカーで駆けつける三女のカレンは、自由奔放で能天気なタイプだ。

主に長女バーバラの視点から描かれるこの家族の物語において、次女のアイビーは悲劇のヒロイン、三女のカレンはコメディエンヌの役回りになる。バーバラの立場には両方の要素が混入し、母ともっとも激しく対立する。

夜、父が湖で溺死したことを家族は知らされる。保安官が家に来ているのにレコードをかけて踊る母ヴァイオレット。このあたりから彼女には、錯乱と狂気、その反対の恐ろしいまでの正気が交互に現れる。

バーバラは母の不安定さが乗り移ったかのように終始イライラし、葬儀から帰って早々に娘ジーンの態度を厳しく咎める。追いつめるような口調に、母の血を引いて自己主張の強いジーンもますます頑なに。夫からは、娘のことで言い争いになったあげく「ムカつくんだよ!」と吐き捨てられる。二人の破綻は夫の浮気が原因だが、彼女の厳しさがその要因の一つだったのではと想像させる。

文=大野左紀子

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