ドクター本荘の「垣根を超える力」


もっとも、計画をそのままやればいいというわけではありません。前出のセンチュリー21では、第一次のロールアウト後に、価値観で抜けていることがあると気づき、それを追加しました。いったん定めたカルチャーや仕組みを実際に体験して、修正していく必要もあります。

デリバリング・ハピネス社が提供するのは、コーチとコンサルティングを掛け合わせた「コーサルティング」というもの。それは、次の5つのプロセスで行われます。

1. 問いかける:学び、触発され、なぜやるか考える
2. 評価する:測り、分析し、計画する
3. 決める:つくり、納得性を醸成し、導入する
4. やってみる:優先順位を決め、実際にやって、証明する
5. 進化する:測り、フィードバックを得て、続ける

この2の「測り」において、同社は従業員調査のツールを開発しており、例えば、従業員、職場、仕事、チーム、組織、社会的意義などを測り、人的資源、組織システム、機能、職場での体験などを含むハピネス・ランドスケープを示します。またリム氏は、社員の生涯価値にも注目し、採用、生産性、エンゲージメント、リテンション(離職率)の改善を図り、クライアントにアドバイスをします。

組織を変革すると、課題も出てくるもの。よってコーサルティングは数カ月から2年くらいにわたり、何度も修正しながら、大きな成果に向けて粘り強く実践されます。

トレンドには安易に乗るな

今年の年頭、2014年に出版された「Reinventing Organizations」の邦訳、「ティール組織──マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(フレデリック・ラルー著) が発売され、話題を集めました。

しかし、リム氏は「ティール組織は素晴らしいコンセプトだが、ティールやホラクラシーなど注目されている自律型組織の実践は容易ではないのでトレンドに乗って安易に取り組んではいけない」と忠告します。

自律型組織とは、階級や上司・部下などのヒエラルキーがない、権限や責任のほぼ全てを個々の従業員に譲渡するフラットな組織体制のこと。しかし、これまで当たり前だった上下関係をとっぱらい、新たな体制に変えるというのが難しいのはご想像の通りです。「こうした体制変更では、人間の行動と心理についても理解が必要です。すぐに100%の成果を求めないことが肝要だ」とリム氏は言います。

また、組織の「遺伝子」や「病状」は各社各様なので、一律あるいは1つのパターンをあてはめることはできないとも指摘します。だからザッポスにせよティールにせよ、流行ったらからといって、次々と飛びつくのではなく、いったん設計したものを実践してみて、さらによいものにしていくことが不可欠です。

ハピネスやつながりなど、「ハート」を大切にした企業文化づくりは、世界的にますます経営の重点となっていくでしょう。かつて筆者は、ザッポスの社員から「家族的経営など日本企業はわれわれのお手本。学ぶことなどないのでは?」と言われたことがありました。

その言葉を胸にしまいながら、日本の経営者も現実から目をそらさず、心機一転して企業文化づくりに力を入れれば、業績改善とともに、新たな日本的経営を手に入れることができるのではないでしょうか。

連載 : ドクター本荘の「垣根を超える力」
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文=本荘修二

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