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ドクター本荘の「垣根を越える力」


デリバリング・ハピネス社のクライアントの業績からも明らかですが、さまざまな研究によっても、幸福度が社員の離職率、ストレス、欠勤・遅刻、事故などに影響すること、そして顧客評価や生産性、営業効率、創造性を改善することが示されています。

デリバリング・ハピネス社の考え方の一部を紹介すると、社員のハピネスは以下の4つの要素が主に影響します。



したがって会社は、崇高な目的(higher purpose)と自社の価値観(core value)を明らかにし、上からの押し付けでなく、一人一人を尊重しながら会社と個人の関係を話し合うなど、コミュニケーションを活性化して心のつながりを大切にすることが求められます。そうして企業文化を築く上では、「経歴は立派だけど価値観が合わない人」は諦めることも必要です。

ザッポスが広めた企業文化というテーマは、マッキンゼーなど大手コンサルティング会社が続々とメニューに加えています。またリム氏自身、「多様なクライアントから多くを学び、企業文化づくりの実行とROI(投資利益率)の実現について、だいぶ進歩しました」と語ります。

経営幹部に必要な“チアーリーダー

では、具体的に企業文化づくりで成果を出すポイントは何なのでしょうか? リム氏はまずこう語ります。

「人数規模や業種を問わず、企業変革はできます。Cレベル(CEOやCOO、CFOなどの経営陣)のコミットメントと経営幹部にチアリーダーが必要です」。つまり、やるぞという思いのあるトップやキーパーソンがいなければ始まらないということです。

リム氏のクライアントにはドバイ政府もいますが、そのトップ(UAEの総理大臣)はハピネス担当大臣を新設して「ドバイを地球上で最もハッピーな都市にする」と宣言し、国民へ強いメッセージを送りました。また、5代続く家族経営の米百貨店チェーン、センチュリー21は、当初幹部の多くは「企業文化プログラムなど必要はない、いまのままでいい」という認識でしたが、リッツカールトン出身の幹部がリーダーシップをとって推進しました。

リム氏は、こうしたリーダーたちは、「人生の経験から、お金や成功だけではない大切なものがあること知っている」という点で共通していると言います。

ニューヨークを中心に20病院を経営するノースウェルヘルスでは、当初、医師たちが反対しました。すでに仕事過多なのに、そのうえなにをやらせるのか、と。しかし、病院の崇高な目的と医師一人ひとりの人生について対話を進めていくと、やがて医師たちは最も強力なサポーターになったそうです。結果として、働く人たちのエンゲージメントは2年で45%から85%に上昇しました。

多くの場合には、反対派がいます。しかし、それを突破する推進力が必要なのです。頭ごなしでなく、対話を続けて気づきをもたらすことで、反対派も賛成派に変わりえます。コミットメントと巻き込みにより、意義ある変革を遂げることができるのです。

トルコのCanpa社は、3日間のブートキャンプで10カ月のカルチャー・ロードマップを作成し、直ちに実施しました。すぐに採用への応募数が月60人から600人となり、離職率も改善。売上高は2年で倍増し、今年トルコで最も働きたい会社の第1位になりました。

文=本荘修二

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