テクノロジー

2018.08.25 13:00

AI vs 広告会社 斬新なものを生み出せるのはどっちだ


何なら仮にこれらのうち「脚本」だけに絞ったとしても、その組み合わせはあまりに膨大です。日本語の90%を理解するのに1万単語ほどの語彙が必要になりますが、これらを使って仮に10語ほどから成る短文を3文ほど作るとしても、その組み合わせは1万の30乗というとんでもない量になり、そしてその多くは全く意味不明な単語の羅列になります。
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そしてこれが「AIを使った実証研究」という範囲であれば、意味不明な動画が生成されても構いませんし、その中から少しでも「それらしいもの」が生まれていれば素晴らしい研究になることでしょう。

しかし、広告主からすれば、意味のわからない動画、あるいは逆に自社製品のイメージを損ねるような動画を作られて配信されてしまったのでは、広告費の問題だけでは済まない深刻な「責任性」という、既に学んだ問題も考えなければいけません。

さらに厄介なのが、広告の動画というものはしばしば、過去にやられたことのないような斬新な言葉遣いや演出のものの方が大きな影響力を持ちうるということです。過去のデータから学習し、その範囲の中でもっとも最適な組み合わせを選ぶ、という現行のAIの性質上、こうした「斬新なもの」を生み出すことはあまり得意ではありません。
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すなわち、いくらデータを集めても「本当に有効な選択肢」がそのデータの外にある可能性は拭いきれません。

このような「有効性が低い」課題への対策として、以前述べた「同質性が低い」という状況と同じように課題の範囲を絞るのも一つの手です。そして、もう一つ「最適な『何』を選ぶのか」という部分だけを変えてみるというやり方があります。

例えば今回の例で言えば、動画コンテンツ自体の膨大な組み合わせを上手く選ぶのがまだ難しかったとしても、「最適な制作会社」をマッチングさせることはそう難しいタスクではありません。

例えば新しい製品の属性やイメージ調査の結果、売りたいターゲット層や予算などのデータから、そうした広告制作を最も得意とする制作会社を選ぶわけです。制作会社の数は有限ですし、そのほとんどはプロとして「有効」なものを作ってくれるはずです。

制作会社によって作るコンテンツの得意不得意があることは十分考えられますが、この「得意」の部分だけを上手く引き出すことができれば、それだけで大きな価値を生むはずです。

このように、「最適な『何』を選ぶのか」というところだけを少し変えてやるだけで、AIプロダクトの有効性が大きく上昇することはしばしば起こります。是非みなさんもこうした柔軟性を持って企画をブラッシュアップしてみて下さい。

連載 : 失敗しないAIプロダクトの作り方
過去記事はこちら>>

文=西内啓

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