ビジネス

2018.08.24

17歳起業家の「大人に舐められない」会社のつくり方

F Ventures創業者の両角将太(左)とワンフィナンシャルCEOの山内奏人


両角:年上を口説くコツはありますか。

山内:要は、その会社で働く価値を提供できれば勝ちだと思っています。弊社のCTOはエウレカでペアーズを手がけていたのですが、エウレカの経営陣に引きとめられていた彼を15カ月かけて口説きおとしました。ビジョンに共感してくれたのが入社の決め手ですが、以前から社内の状況を定期的に細かく伝えていたので、入社した頃にはすでに社内のことを把握してくれていました。

両角:自分よりはるかに年長の人を、どうやってマネジメントしているのでしょう。若手起業家は、チームも同い年のメンバーで固める傾向があるように思いますが。

山内:むしろ同年代でワイワイするのが苦手ですね。創業時に組んでいた年の近い人とは、息が合わなかったです。

自分にはできない技術を持つ人を雇っているので、基本的にそれぞれの業務に口出ししません。「ONE」のコードはだいたいエンジニアが書いているし、採用だって僕がいなくてもできるはず。幹部とのミーティングで目線を合わせておけば、彼らがやりたいようにやってくれるのがベストなはずです。

誰かを笑顔にするプロダクトで人の記憶に残りたい

両角:逆に、山内さんが認識する自分の弱みはどこなのでしょう?

山内:詰めが甘いことですね。ONEも10円というレシートの買取り金額は完全に勘で設定しました。けれど、自分が完璧ではなくても周りのメンバーや投資家が助けてくれる。足りない部分は誰かが補ってくれるとわかっているから、あらゆることに全力でぶつかることができています。

両角:それだけリスクを取れるのがすごいですね。

山内:うーん、別にリスクだとは思っていないですね。結果を天命に任せるしかないならリスクかもしれませんが、事業の成功確率は努力次第で高めることができる。

孫正義さんは、まだ時価総額が1兆7500億円程度しかない頃にボーダフォン社を買いました。当時の世間からすれば高い買い物だと思われていたかもしれませんが、彼の脳内にはすでにボーダフォンが大化けすると確証できるデータがありました。一括りに「リスク」と見なさずにデータを収集すればおよその確率はわかりますし、危険性を下げることもできます。

両角:やはり山内さんの強さは、そういった勉強を怠らない姿勢ですよね。

30歳以下の起業家と20歳以下の起業家では、戦い方が大きく違うと思っていて。社会人経験がある30歳以下なら業界の弱点をある程度把握しているので、そこにフォーカスすることで大きな市場をリプレイスできる。

一方、20歳以下は業界構造には縛られずに若者ならではの視点で新しいサービスをつくる。正直にいえば、Tik Tokのようなトレンドは、僕には把握しきることはできません。この点でいうと、山内さんは両方の側面をもっていますよね。

最後に、これからの進路はどう考えているのでしょうか。スタートアップに専念しますか。

山内:自分のビジネスだけに専念していると視野狭窄になる気はしています。まだ決まってはいませんが、大学で哲学や建築を勉強してみたいとも思っています。大人になってからだと、なかなか勉強する時間が取れなさそうなので。

実は、僕の最終的なビジョンは、「街」をつくることなんです。

両角:街?

山内:これは広義のインフラのことで、人間にとって本当に意味があることをしたい。「街」を構成するのはハードとソフトですが、いま注力している決済領域は後者です。だからこれからはハード面としての建築や、広義のインフラとして重要な哲学やエンタメも勉強してみたい。

その街では、暮らしているみんなが笑顔になれるんです。ONEでレシートを扱うことにしたのも、コンビニ弁当ばかり食べる人たちをちょっとでも笑顔にしてみたかったから。もちろんそうした生活もいいですが、毎日の暮らしの中からちょっとした発見や笑いが絶えず生まれる……。そんな街をつくりたい。

結局、根源にあるのは承認欲求なのかもしれません。自分のつくったものを世界に認められたい。究極的につくりたいのは、僕が死んでからでも残るような100年単位の会社なんです。

構成=野口直希 写真=小田駿一

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