しかし同時に、観光業界はメキシコ経済の足かせとなっている暴力・犯罪問題と無縁なわけではない。人気観光地のカンクン市は暴力犯罪の増加に悩まされている。今年3月には、カンクンのフェリーに爆弾が仕掛けられ、少なくとも24人がけがをした。昨年には、バハカリフォルニアスル州のビーチを訪れていた観光客3人が、自動小銃で武装した集団に殺害された。
また、アカプルコほど暴力がまん延している街はないだろう。今年1月、ビーチ沿いのバーで起きた銃撃戦によりチリ人観光客1人が亡くなった。同市では今年、バスや車でアパプルコに到着した観光客が武装集団に襲われる事件が相次いでいる。
メキシコが現在置かれる変化の波について理解を深めるべく、私は中南米に特化した市場参入・ビジネスサービスのコンサルティング企業ビズラテン・ハブ(BizLatin Hub)のメキシコ担当責任者、アレックス・マホニーを取材した。
━━現在、メキシコ観光業の成長をけん引しているものは? また、投資と観光客数が現在、最も増加している地域は?
メキシコは、観光分野で急激な成長を遂げている。メキシコを2017年に訪れた観光客は約3500万人だ。また世界銀行によると、観光産業は同国で3番目に大きな外貨獲得源で、国内総生産(GDP)にも大きく貢献している。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が2017年に実施した調査では、メキシコ観光産業の年間成長率は3.0%で、国全体の経済成長率を上回ったことが分かった。エンリケ・デラマドリ・コルデロ観光相によると、メキシコ観光産業の2017年市場規模は前年比2.9%増の213億ドル(約2兆4000億円)に上った。これは良い傾向であり、私はこの成長が短期から中期にわたって続くと予想している。
メキシコ政府は観光業の成長を促すため、インフラ改善への公共支出を確約し、観光部門とつながりのあるさまざまな分野での外国投資を増やす取り組みを進めている。こうした支援が、安定した成長を確保するための鍵であることは想像に難くないだろう。
メキシコ国内で最も人気の投資先地域はメキシコ市やリビエラマヤ、ロスカボス、カンクン、プエルトバジャルタ、リビエラナヤリットで、観光客のほとんどは米国やコロンビア、英国、スペイン、フランスからの人々だ。こうした地域で観光産業が安定した成長を遂げる中、投資が増えているのも驚きではない。