治安悪化のかたわら栄える観光業 メキシコが直面する課題

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━━観光業への投資増加に貢献している大きなインフラプロジェクトはありますか?

実は、メキシコは過去数年間、インフラプロジェクトの面で劇的な成長を遂げており、これからさらに多くのプロジェクトが予定されている。メキシコ国家観光振興基金(FONATUR)も設立され、メキシコでのいわゆる「観光体験」を向上させるようなインフラを整備すべく、外国直接投資(FDI)を誘致している。

現在進行中の大きなインフラプロジェクトとして、メキシコ湾とカリブ海の間に位置するカンクンの空港で、2018年に新ターミナルがオープンする。主に北米から毎年、同市のビーチを目当てに訪れる大量の観光客に対応するためのもので、同市への航空便が増え、毎年追加で900万人の観光客に対応できるようになるという。新ターミナルは、今年10月に完成予定だ。同地域への観光客流入が増えるにつれ、旅行代理店や医療・旅行保険企業、ホスピタリティー業界、英語学校など、観光への投資も伸び続けている。

カンクン空港に加え、メキシコ市やメリダの空港も、海外からの観光客により多く対応し、観光業界を成長させるため改修予定だ。こうしたプロジェクトはカリブ海沿岸だけでなく、メキシコ全土での観光業の成長を明示している。

━━治安の問題は、観光産業にどのように影響していますか?

メキシコ政府が、治安問題が観光産業の継続的な成功を脅かしていると認識していることは間違いない。

残念なことに、暴力の問題は近年、メキシコに影響を与えている。バハカリフォルニアスル州など、人口の多い人気観光地では、ここ数カ月の間に暴力犯罪の数が急増した。今年はこれまでに、政治家や政治家候補を狙った殺人事件が既に120件を超えている。これはどう見ても恐ろしい数字だ。その結果、メキシコが危険な居住国ランキングの上位に入っているのは隠しようもない事実。2017年の殺人事件発生件数は前年比26.9%増の2万5000件余りと、1997年以降最多を記録した。

治安が悪化しているにもかかわらず、メキシコの観光業はおおむね影響を受けていない。このことに、私たちは驚いている。

特に暴力犯罪が少ない地域は、リビエラマヤ、カンクン、プエブラ州、メキシコ市、グアナフアト州、メリダ市、チアパス州だ。例えばゲレロ州では、2018年の第1四半期に1161件の殺人が起きたのに対し、人気観光地のキンタナロー州で同時期に起きた殺人は134件だった。こうして見ると、違いが明確だ。

長期的な治安問題は、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール次期大統領の姿勢や、メキシコ政府が犯罪と麻薬取引撲滅のため、米国とどれほど協力する意思があるかによっても大きく変わると思う。

編集=遠藤宗生

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