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難民のLさんとPさん。1年近くに及んだ入管施設での収容を経たのちに渡部に出会ったアンゴラ出身のPさんは、現在はWELgeeの一員としてハウスのマネジャーを務める。「WELgeeは家族のような存在」とPさんは語る。

ひとりの人間として

「彼女がいちばん凄いのは、『難民』というラベルではなく、純粋にひとりの人間として目の前の人を見ることができるところじゃないかな」──あるWELgeeのメンバーは、渡部のことをそんな風に評した。

世界中で難民に対する風当たりは厳しくなっている。各国で右派政党が躍進し、ハンガリーのように難民を支援すること自体を罰する国すら出てきた。元から難民に冷たかったここ日本では、「偽装難民」という言葉がメディアの上で躍っている。

「私は法務省じゃないから、一人ひとりの外国人が難民条約の文脈で『難民』であるかを見抜けるわけではありません。目の前にいる人が人間として信頼できるかどうか。一人ひとりがどんな可能性をもっているか。それだけしか見ていないんです」

その人の過去を、歴史を、素性を知らない人間に直面したとき、多くの人は信じるよりも疑うほうを選ぶ。話を聞いてみるより、そっと離れることを選ぶ。つまり、難民になる、母国や共同体を喪失するということは、単に家や仕事を失うだけでなく「信じてくれる他者」そのものを喪失する経験なのではないか。彼らは入管から、メディアから、友人からも、疑われる。

「難民がみんな『いい人』だと言いたいわけではないんです。こじらせている人もいますし、『人を傷つけるのはよくない』と彼らに伝えることもあります」と渡部は言う。「そんなとき、私はいつも『何が彼をここまでひねくれさせてしまったんだろう』と考えて話を聞いてみる。すると『カブールの家が爆撃されてしまったんだ』といった話が出てくることもあります。そりゃあ素直にニコニコと話せるわけもないですよね」

彼女の眼には曇りがない。目の前の人間をただまっすぐに見つめ、先入観でジャッジしない。難民たちが不安のなかで本当に必要としているのは、きっとそういう眼差しなのだろうと思った。

疑うよりも信じることを。ひとつのラベルよりもひとりの人間を。そして、「帰れ」よりも「ウェルカム」と伝えることを。彼女が身にまとう「歓待の精神」は、これからこの社会のなかにどこまで深く根を張っていくことができるだろう。

ウェルカム、レフュジー。私はあなたの話を聞く。保護すべき弱者としてだけでなく、たくさんの可能性を秘めたひとりの人間として。


Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Social Entrepreneurs」カテゴリーで選出された、WELgeeの渡部清花以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている



渡部清花◎1991年、静岡県生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・国際社会科学専攻。人間の安全保障プログラム修士課程。大学時代はバングラデシュの紛争地にてNGOの駐在員。トビタテ!留学JAPAN1期生。バングラデシュ、国連開発計画(UNDP)元インターン。Makers University 1期生。WELgeeという団体を設立し、日本に逃れてきた難民と一般の家庭をつなげる「難民ホームステイ」の事業化を目指す。

文=望月優大 写真=上澤友香

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