Forbes JAPAN 編集部 編集長


「中学校を辞めて良かったし、それをサポートしてくれる親で本当に良かった!」と、オロノは言う。

夏休みの帰省中、ライブ会場で、演奏を終えて他のバンドの演奏を見ていた前出のエミリーらに声をかけた。歳の離れた中学生の口から出てくる音楽の知識に、彼らは驚いた。そしてメンバーはこう言うのだ。「波長が合ったんだ」と。

オロノがアメリカに戻ると、フェイスブックでの交流が始まった。ハリー(赤いトップスの男性)はこう言う。

「フェイスブックでオロノが描いた絵を見ると、彼女は独自の視点で世界を見て表現しているんだ。彼女の詩もそう。僕らは彼女のような詩を絶対に書けない。きっと、特異なバックグラウンドが彼女にユニークな視点をもたらしたと思う」

オンラインでつながったメンバーたちは、送られてきたオロノの歌声を「スピリチュアルだ」と、新しいバンドに誘った。そしてオロノが書く詩を、「ふだん見慣れているものを超越する力がある」と、誰もが歌詞のメタファーに引き込まれていった。それは、目の前の光景を、異なるイメージに解放してパッチワークのようにコラージュしていく詩だ。1960年代のサイケデリック革命の父と言われたティモシー・リアリーの言葉が登場したかと思うと、日本のお菓子が出てくる。周囲に違和感を抱き続けた10代ならではの視点だろう。その世界観がメンバーたちに刺さったのだ。

「みんな、育ちも国も年齢もバラバラ。高校時代に誰とも関係を築けずに苦労した者もいる。ただ、共通しているのは、音楽を宗教のように尊敬してること。これで僕らはつながっているんだ」(前出のハリー)

「音楽」という居場所を見つけたメンバーたちによるスーパーオーガニズムは、世界中に共感するファンを増やしている。バンドは、7月28日、フジロックフェスティバルのステージに立った。そこでオロノはこう叫んだ。

「I’m not a Japanese!」

日本人を否定しているのではなく、あらゆる枠を超越したい、そう宣言しているように聞こえたのだった。


Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Entertainment & Sports」カテゴリーで選出された、ミュージシャンの野口オロノ以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている



野口オロノ◎
「Superorganism」のボーカル、アートワークを担当する。2018年1月にバンド結成後、ネット上に曲をアップするとフランク・オーシャンやヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグらが自分達のラジオ番組でプレイしたことで話題に。「JAPAN TOUR 2019」は1月19日から北海道を皮切りに全国を回る。

文=藤吉雅春 写真=嶌村吉祥丸

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