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左から齊藤涼太郎(FULMA)、阪野思遠(LanCul)、黒越誠治、中村暖(DAN NAKAMURA)、吉田亮(「ホトカミ」を運営するDO THESAMURAI)

狂気を秘めた起業家も、投資家に支配されるうちに飼いならされた羊になる。では、狂気も愛も冷めない関係を維持する方法をご存知だろうか──。


東京・恵比寿のオフィスタワーの一角をしめるインキュベーションオフィス「COEBI(コエビ)」。見晴らしの良いフロアに足を踏み入れると、ラフな服装の若い起業家たちが真剣な表情で自らの課題に取り組んでいた。

大学が休みの週末に、最も混み合うというここを拠点とする起業家は、総勢25名。インバウンド旅行者向けの動画メディア運営、ドローン活用の地理教材提供、ユーチューバーになるための小学生向け教育プログラム……。

旬を感じる事業も多数ある一方、社会的意義は高いが、収益化は一筋縄でいかない印象のものもある。たとえば、神社お寺の投稿サイト「ホトカミ」を運営する吉田亮は、参拝者を増やしたらお賽銭の一部を受け取るビジネスモデルを構築中。NPO法人を立ち上げた渡部清花は、難民支援を事業化しようとしている。

「別にすぐ収益化できなくてもいいし、利益を還元する相手は僕じゃなくてもいい。次の世代に引き継いで還元する意識をもってくれることが重要です」

そう言って若い起業家たちを見守るのは、COEBIを運営するデジサーチアンドアドバタイジング代表取締役、黒越誠治だ。黒越はNPO法人ETIC.が主宰する次世代イノベーター育成の私塾「MakersUniversity」のメンターとして、特別ゼミ「クロコム」を開講。ゼミ卒業生たちの活動支援の場として、1億円をかけてCOEBIをつくった。吉田や渡部もクロコムの卒業生だ。

若手起業家へのサポートは、スペースの提供にとどまらない。個人として適格機関投資家の届け出をしている黒越は今年1月、吉田の会社に約1億円を出資した。この出資が一風変わっている。通常、VCやエンジェルは株式を引き受けるかわりに将来のエグジットを期待する。しかし、今回の出資はエグジットを前提としていない。吉田に会社を上場させる努力義務はなく、黒越もそれを強要してはいけない契約になっている。

共感型のソーシャルエンジェル出資。そう名づけられた今回の出資の意図を、黒越は次のように説明する。

「イノベーションを生むのは、起業家の“ピュアな狂気”なんです。シード期に外からお金を入れて上場をミッションづけられると、起業家はもともと自分のやりたかったことと異なる方向に走ってしまう恐れがあります。非線形なイノベーションは、期限を区切ったり、管理する発想からは生まれない。ピュアな狂気を保たせたければ、エグジットのプレッシャーをかけないほうがいいのです」

黒越は、上場を目指すことに反対ではない。現に、本人が望めば、ハンズオン支援で出資先を上場させたこともある。では、この資本の論理に抗うようなスキームは、どんな原体験から生まれたのか。

文=村上 敬 写真=小田駿一

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